劇場公開日 1951年3月1日

黒水仙(1946)のレビュー・感想・評価

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3.5もう一声ほしさはあるが見ごたえあり

2023年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

インドの山奥の後宮宮殿をキリスト教布教の足掛かりとすべく
修道女たちが移り住んでくる。

慣れない地で、己の信心や
道徳の揺らぎをおぼえて
思いもよらない方向へ
運命が動いていく。

修道女姿でありながらもヒロインの美しさにため息が出そうだ。
かたくなに信仰によすがを求める姿が
逆に危うさを感じさせもする。

鐘を打つたびに絶対ここから…とみんな思うだろう。

最終的にはもう一声踏み込んでほしいとも感じるが
見ごたえがあり面白かった。

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こまめぞう

1.0せっかくのデボラ・カーの美貌も、作品自体が凡庸では…

2022年8月16日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

たまたまフレッド・ジンネマン監督作品を
まとめて観ていて、
オードリー・ヘップバーン主演の
「尼僧物語」を鑑賞、
また、やはりジンネマン監督の
「地上より永遠に」のデボラ・カーに
誘導され、この尼僧物を初鑑賞した。

しかし、映画としては凡庸な感じだった。

前半は何を描こうとしているのか
分からないまま話したが進んだが、
後半になってようやく“修道女”としての
愛欲への誘惑、
診療奉仕の限界の悩み、
そして赴任社会との距離感と孤独、
等々がテーマになっているように感じたが…

新しい土地での布教の話としては、
「沈黙」や「ミッション」を思い出す。
それぞれ神父の異文化世界での
命懸けの布教の中での
己との葛藤に心打たれたものだが、
もちろん描く観点も違うし、
請われて布教に行く行かないの
状況も異なるものの、
この作品では命懸けではない分、
私の心にも
響くものが不足したように思う。

余り評価出来なかった「尼僧物語」
の中での、ヘップバーンの
信仰・診療と俗世間との狭間で
揺れ動く心理葛藤描写にも達しなかった
イメージだった。

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KENZO一級建築士事務所

4.0前回、訪問したときはレビュー4.1だったが今回は4.2に上がっていた

2022年6月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

あんな崖っぷちにある鐘をついてたらいつかは落ちてしまうと思っていたがやっぱり落ちた。

派遣された5人の尼僧たち、それぞれ個性があったが天使のラブソングに出てくる尼僧とはかけ離れていて時代が違うとこうも違うんだと思った。
それともイギリス人とアメリカ人の違いか?

この時代の映画は特撮とかも無くカメラアングルが色々工夫されていてたまに見たくなる。
この映画もしかり、評価が高いのはそんなところもあるのでは無いか?
ただ、男性主人公ディーンの髪型は今ひとつだった。

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Elton Shin

5.0現代では、そんな僻地の話では無くなったというのが本作のテーマであると思います 黒水仙の香りは街の至る所で香り、性的な誘惑に街は満ちています

2021年7月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

映画.com では1946年になっていますが
手元の資料によると1947年5月26日英国公開となっています
どちらが正しいのでしょうか?

カラー作品
マイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガーが共同監督
不朽の名作「赤い靴」の一つ前の作品

黒水仙とは劇中の人物が使う男性用香水の銘柄の名前

水仙の花言葉は「自己愛・うぬぼれ・自尊心」
英語名はナルキッソス、その語源はギリシャ神話の美少年ナルキッソスによるもの
ナルシストという言葉はここから来ているのはご存知のとおり

それが黒いのだから「ちょいワル」向けの男性用香水というニュアンスがあります
黒は孔雀の色
黒水仙のことを「自惚れ屋の黒い孔雀」という台詞がでてきます

つまり女性に対して性的な誘惑の香りだということです
決して体臭を消す為の爽やかな香りではないはずです

水仙の香りは優しい甘い香りですが、水仙の花壇が近くにあるとすぐに気付くほどその香りは強く香るものです

なぜその香水の名前が本作の題名なのでしょうか?
それが本作のテーマだからです

学校と病院を兼ねた修道院は、文明から隔絶されたインドはヒマラヤの山奥の断崖絶壁の上の廃された宮殿を使っています
しかしその古い宮殿は実は元は先代将軍の後宮で、別名「女の館」だったのです

その壁面には裸体の女性など性的なモチーフの壁画で埋められています
後宮だった頃、ここがどの様であったのかを細密に描かれた絵画も序盤に登場します
調度品も男女が性的に楽しむ為の優美な形状をしています
それもこれも後宮という目的に沿って、意識下で女性を性的な気分にさせるためもの

しかも、その地には男性的な魅力を発散させるイギリス人ディーンがいるのです
高地で風の強い土地なのに、彼はいつも逞しい胸元を広く開けて胸毛を見せ、短パン姿で足を腿までだしてシスター達の前に現れます
彼の帽子には鳥の羽が付いており、その形はピーターパンを思わせるます
本当の事を口にしてしまう、大人になりたくない子供だという事です

しかし彼は身長も高く、体格も大きく、容貌も実は良い血筋の出の男だとわかる知的な顔立ちです
声も低く、クリスマスキャロルを歌うとシスター達のソプラノの遥か低音の甘くて良く響く男の声を響かせます
性格はくだけているというか、クリスマスに酔って礼拝に来てしまうくらいいい加減な男
神や修道院への敬意に欠ける男
つまり相手がシスターであっても男女の間違いが起こりうる、そんな危うさを漂わせています

成り行きで修道院で預かる事になった土地の17歳の少女カンチは後宮だったころの時代の価値観のままの女性です
彼女は美しいだけでなく、より美しく見える長い髪、赤い体の線の出る華美な服装、キラキラとした装飾品を身につけて女性の本能のままに生きています
まるで後宮にいた女性達を描いた壁画から抜け出してきたような少女です
どれもこれもシスター達が禁止されている女としての欲望を自由気ままに彼女達の目の前で見せびらかすのです

ここで学ばせてくれと押し掛けてきた若君は、青年の肉体と宝石、豪華な衣装を見せびらかし、題名の黒水仙の香水の匂いを漂わせるのです

つまり、この土地は雄大な山脈の光景と爽やかな空気しかないのに、シスター達にとっては、性的な誘惑が濃密に充満しているのです
黒水仙の強い香りが教室に充満したように

しかもここは高地のさらに岩棚の上
視線を巡らせば遥か彼方まで見晴らせるのです
「ここは遠くまでみえすぎるのです」
過去の修道女になる前の女性としての喜びを思いだしてしまうと
厳しく自己を節制するここでの生活が苦痛に感じてしまうと
手がマメだからけになるほど働いても雑念は消えないのです

そのシスターはこういってこの地を去ります
「ここで生きていくなら、見ないふりをするか、無我に達するか」どちらも自分にはできないと

この性的な誘惑によりシスターが死んでしまう大事件も起こってしまい、シスター達は結局この地を去って行きます

このダージリンよりもまだ奥地、標高2700メートルもの高地のインドの僻地のお話
時代は20世紀の始めの頃かと思われます

しかし現代では、そんな僻地の話では無くなったというのが本作のテーマであると思います
黒水仙の香りは街の至る所で香り、性的な誘惑に街は満ちています

女も男も、あの僻地の修道院の様なところで、生活し、仕事をしているのです
気持ちを強く持たないと、つい誘惑に負けてしまいそうになります

あの異動を希望したシスターのように、見ないふりをするか、聖人のようになるか
どちらも出来なければ?
異動しても逃げる先はどこにも無いのです
その問題提起が本作のテーマであったのです

いまは21世紀
公開当時から74年も経ちました
現代人の我々は、公開当時よりもさらに性的な誘惑に露骨にさらされています

とはいえ、私達はシスターでも神父でもないのですから、別に誘惑に負けても、不倫でもない限り大したことではない世の中です

しかしコロナ禍
緊急事態宣言の下では、異性との出会いの場もありません
しかし、誘惑はスマホからネットをつうじて直接あなたにもわたしにも黒水仙の香りを嗅いだかのような誘惑を送り込んでくるのです
悶々とするしかないのです

私達はいま、このインドの奥地の修道院にいるのかもしれません

デボラ・カーの尼僧姿の美しいこと!
彼女の出演作品の中でも一番美しいと思います
白い肌はまるで磁器のようです
大きな青い瞳はまるでエメラルドかトルコ石です

ジャック・カーディフのカメラが素晴らしいです
特に高い鐘楼を上からの構図で断崖絶壁の下までを強い遠近法でみせたカットはため息がでました
しかもクライマックスの大事件の伏線になるカットでもあったのです
「赤い靴」でも彼のカメラです

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あき240

5.0「黒水仙」の意味するところ

2020年8月25日
Androidアプリから投稿

26才のシスタークローダ(デボラ・カー)は 4名のシスターと共にヒマラヤの奥地に赴任する

都市部(インド コルカタ)とは全く違う 山岳部族の人々

高地の空気の透明さと強風も人々の心に関係しているらしい
(欲望に忠実で感情的)
シスター達の心にも波風が立ち始めるが
未熟なリーダー、シスタークローダはこれを止められない
そして自分自身も辛い恋愛の中に楽しい日々があったことを思い出す

この感情に蓋をして 奉仕活動をすることが ここの人々の心に響くのか…と思わされ
それが自己満足と受け止められもする
そして英国国教会の〈高潔な志〉の裏に非人間的な組織を感じたりする

昔はハーレムだった宮殿を利用するのも心を乱す
王子はこの女子教育の場に 香水をつけ宝石をひけらかしながら在籍する(この感覚)
飾りたて、自分に見惚れ、踊るカルチ(シモンズ)は甦ったハーレムの美女そのもの
鏡も効果的に使われ、彼等の自己満足、自己肯定、自己陶酔が感じられた

ジャック・カーディフ(撮影監督)の仕事振り他、見処満載の映画でした
そして英国映画らしい
(今度は字幕版で見たい)

とても面白く、観る人により色々な意見が出そうな映画でもありました

ちなみに黄色い水仙の花言葉は「もう一度愛して」「私の元に帰って」で
ラッパズイセンのは「尊敬」「報われぬ恋」など
この花はカルタゴで殉教した 聖パーペチュアとフェリシタスに捧げられているようです

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jarinkochie