黒馬物語

劇場公開日:

解説

薄幸な生涯を送る黒馬と、少年の汚れない心のふれあいを描いたアンナ・シュウェルの名作小説『ブラック・ビューティ』の映画化。監督は「野生のエルザ」のジェームズ・ヒル、脚本はウォルフ・マンコウィッツ、撮影はクリス・メンジス、音楽はライオネル・パートが各各担当。出演は「小さな恋のメロディ」のマーク・レスター、ウォルター・スレザック、ピーター・リー・ローレンス、ウルスラ・グラス、パトリック・ムーワーなど。

1970年製作/イギリス
原題:Black Beauty
配給:現代映画
劇場公開日:1972年8月5日

ストーリー

おだやかな風の中で、若草が美しく萌えあがるアイルランドのエバンス牧場。そのエバンス牧場で、可愛らしい黒い仔馬が一匹生まれた。その黒い肌は艶やかに光り、大きな眼は聰く、美しかった。この出産を見守っていたエバンズの一人息子ジョー(M・レスター)は、誕生の瞬間、感きわまって思わず“マイ・ブラック・ビューテー”と叫んでしまった。それからというもの、片時も離れられぬ友達同志になった。ジョーは母のいない淋しさを忘れ、ビューティーは彼の愛情を一身に受けて育った。だが思いがけない不幸が彼らに忍び寄ってきた。エバンズが投資に失敗し、牧場の全てを手ばなさなければならなくなったのだ。その夜、馬小屋で寝るジョーは愛馬との別離に涙が尽きなかった。一方、ビューティーにも思いもよらない流転の旅が、この日から始まろうとしていた。動物を虐待する男からジプシーの男へ、さらにサーカス団へと、見知らぬ人の手から手へ、見知らぬ土地から土地へ、ただ黙々と流転の旅を重ねるビューティーの宿命の旅は、いつ終るとも知れなかった。ピゴット卿は、ビューティーを娘のアンに誕生祝いとしてプレゼントし、その日のからアンは、ビューティーに乗って恋人ジャベーズとの逢引きの場所に通う。その二人の恋はビューティーの運命を大きく変える。ビコツト卿に、アンとの結婚を許されぬまま戦場に向わねばならないジャベーズ。愛を引き裂かれる苦しみにたまらなくなったアンは、せめて無事帰還できるようにと、ジャベーズにビューティーを託すのだった。黒い名馬にまたがったベジャーズは、イギリスの名誉をかけて遠征の地インドでゲリラと戦い壮烈な戦死をとげた。戦いに打ちひしがれたビューティーは、中尉の酒代欲したのために二束三文で石炭商人の手に渡され、過酷な労働が始まった。疲れてもあえいでも、容赦なくムチが鳴る。ビューティーは遂に病に倒れ、見捨てられたが、石炭商人に雇われていた少年の愛が唯一の救いとなった。夜を徹して看病する少年のやさしさは、かつてのジョーに似ていた。病から立ちなおらないうちに、再び荷馬として引きずりだされ、その酷使の中で死に果てそうになったビューティーにようやく神の救いの手がさしのべられた。街の大通りで、石炭商にムチ打たれ、息もたえだえになっているビューティーをジョーが救ったのだ。あのエバンス牧場での楽しい日々から何年たっていたことだろう。ビューティーの眉間にある白い流れ星をジョーは忘れていなかったのだ。

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