危険なめぐり逢い

劇場公開日:

解説

性格のまったく逆な二人の若い娘が闖入者によって数奇な運命にまき込まれていくさまを描くサスペンス。製作はカルロ・ポンティとジャック・バール、監督は「狼は天使の匂い」のルネ・クレマン、脚本はクレマンとマーク・ペプローの共同、原案はルチアーノ・ヴィンセンツォーニとニコラ・バダルッコ、撮影はアルベルト・スパノーリ、音楽はフランシス・レイが各々担当。出演はシドニー・ローム、マリア・シュナイダー、ロバート・ヴォーン、ヴィック・モロー、ナジャ・ティラー、ジョン・ウィッティングトン、レナート・ポツェットなど。

1975年製作/フランス・イタリア合作
原題:La Baby Sitter
配給:東宝東和
劇場公開日:1976年5月22日

ストーリー

ミシェル(マリア・シュナイダー)が、パリからここローマにやってきたのは彫刻を学ぶためだった。彼女は美術学校に通うかたわら、ベビー・シッターのアルバイトで何とかその日その日をきり抜けていた。そんなある日、ミシェルは久しぶりに芸術家仲間のボーイフレンド、ジャンニ(レナート・ポツェット)とデートの約束をした。しかし約束の場所に向かう途中、彼女の乗ったタクシーが突然道路からとび出してきた若い娘をはねてしまった。砕けたフロントガラスの破片の中に血まみれになった女の顔がゆがんでいる。その女の名はアン・カーソン(シドニー・ローム)、所持していたパスポートからアメリカ出身の女優ということが判明した。彼女はたった今、愛人フランクリン(C・メーナー)に棄てられ、街にとび出してこの事故にあったのだ。数カ月後、ミシェルと傷の癒えたアンは、自動車事故が縁で同じアパートの一室で暮らすようになっていた。生活のあてのないアンは、次々に豪華な毛皮やドレスを売り払い、金に換えた。それは愛人の座を追われた女の惨めな末路だった。しかしアンは、ミシェルや事故のとき偶然居合わせたフランクリン・コンツェルンの支配人ヘンダーソン(A・ブランチア)の友情に励まされ、再起の道を歩み始めようとしていた。やがて、端役ではあるが知人スチュアート(ロバート・ヴォーン)の紹介で映画出演が決まり、ようやくアンにもチャンスが訪れようとしていた。しかし、アンの期待は虚しく破れた。監督が当然のようにアンに裸になることを要求してきたのだ。約束と違うと怒って楽屋に逃げるアン。血相を変えて彼女を追うスチュアートとヘンダーソン。やがてアンは、説得する二人の男の顔をにらむといきなり衣裳を脱ぎすてた。そこには豊かに隆起した乳房を切り裂くように見るも無惨な自動車事故の痕跡が生々しく残っていた。このとき、アンの心の中はフランクリンに対する憎悪でにえたぎっていた。ある夜、フランクリンの豪邸にひとりの女が入っていった。居間にいた一人息子のブーツ(ジョン・ウィッティングトン)に何かを呑ませると、“フランクリン様”と書いた手紙を残して去った。女はミシェルに似た黒髪のかつらのアンだった。その頃、ミシェルのもとに突然、家政婦派出所からベビー・シッターの依頼電話がかかった。ジャンニと会う約束があるミシェルは断ろうとしたが断りきれずやむなくフランクリン家に出向いたが、家には誰もおらず、ブーツが眠っていた。やがて先刻の依類人から“今晩中居て下さい”という不思議な電話があり仕方なくミシェルはジャンニに連絡しようとしたが、電話は故障していた。一方ジャンニは、姿を見せないミシェルを心配してアパートを訪ねたが、応対に出たのはどこか落ちつかぬげなアンだった。翌朝、ミシェルは目覚めたブーツの異常な態度に驚いた。やがて落ちついたブーツから、昨夜の謎めいたベビー・シッターのことを聞いたミシェルは何か不吉な予感を感じ、この家を出ようとした。しかしそのとき、黒覆面をした男(ヴィック・モロー)が邸に押し入り、二人を誘拐した。その頃、ミシェルが人質になっていることなど夢にも知らぬジャンニは警察にいったが何の手がかりも得られなかった。一方、人質となったミシェルとブーツは幾度となく脱出を試みたが無駄だった。そのうえ恐ろしいことに正体不明の黒覆面の男は残忍にも事件を察知した隣家の女主人を殺害しているのだ。そのことを知ったアンは首謀者であるスチュワートとその妻ロッテ(ナジャ・ティラー)に怒りをぶつけたが今さらどうすることも出きなかった。朝もやがたちこめる街道を身代金三百万ドルを渡すべくフランクリンの車が疾走する。小高い丘から、その車を望遠鏡で追うスチュアートとロッテ。そしてその後ろには、何とアンが父親とも慕っていたあのフランクリン・コンツェルンの支配人ヘンダーソンの不敵な笑い顔があった。やがて三百万ドルがスチュアートたちの手に渡ろうとしていた。しかし、そのとき、突然爆音とともにスチュアートとロッテが乗っていた車が火を吹いた。ヘンダーソンがダイナマイトを仕かけたのだ。そして覆面で顔を隠したヘンダーソンがシートにあったカバンを奪うや去っていった。やがてブーツはミシェルに連れられ無事、父フランクリンのもとに帰っていった。そして憔悴してアパートに帰りついたミシェルが、そこで見たのは浴槽に沈むアンの無惨な死体だった。傍に“すべては私の責任です。迷惑かけてご免なさい”と書かれたアンの手紙が一通残されていた。

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