かくも長き不在

劇場公開日:

解説

「雨のしのび逢い(1960)」のコンビ、マルグリット・デュラス、ジェラール・ジャルロのシナリオをアンリ・コルピが演出したロマンチック・ドラマ。撮影は「OSSと呼ばれる男」のマルセル・ウェイス、音楽はジョルジュ・ドルリューが担当した。出演は「顔のない眼」のアリダ・ヴァリ、「めんどりの肉」のジョルジュ・ウィルソン、ほかにジャック・アルダン、ディアナ・レプヴリエ、カトリーヌ・フォントネーなど。なお、六一年度ルイ・デリュック賞、同年カンヌ映画祭グランプリを受賞している。黒白・ディアリスコープ。

1960年製作/フランス
原題:Une aussi longue absence
配給:東和
劇場公開日:1964年8月14日

ストーリー

テレーズ(アリダ・ヴァリ)は、セーヌの河岸に近い、“古い教会のカフェ”の女主人。貧しい人々の憩の場である。しっかりものと評判高かったが、女盛りを独り身で過したのだ。運転手のピエール(ジャック・アルダン)の親切にほだされるのも無理からぬことだった。彼女が、朝と夕方、店の前を通る浮浪者(ジョルジュ・ウィルソン)の姿に目をとめたのは、そんなある日だった。十六年前、ゲシュタポに捕えられたまま、消息を絶った夫アルベールに似ているのだ。彼女は不安の混った期待でその男の通るのを待つようになった。ある暮れ方、手伝の娘に男を導き入れさせ、物陰で男の言葉に耳を傾けた。男は記憶を喪失したのだという。彼女は男の後をどこまでも尾けて行った。セーヌの河岸のささやかな小屋。その夜、そこから離れなかった。翌朝、男と初めて言葉を交した。彼女はもしや……という気持が、もう動かせない確信に変っていった。何日か後、アルベールの叔母と甥を故郷から呼び、記憶を呼び戻すような環境を作ってその結果に期待したが、彼の表情に変化は認められなかった。叔母は否定的だったが、彼女は信じて疑わなくなった。ある夜、男を招いて二人だけの晩さんをした。ダンスをした。それは幸福な記憶に誘う。彼女の眼にはいつしか涙が光っていた。夫の記憶を取り戻す術はないのか。背を向けて立ち去ろうとする男に、思わず叫んだ。「アルベール!」聞えぬげに歩み去る男に、それまでの一部始終を伺っていた近所の人たちも、口々に呼びかけた。瞬間、男は立ち止った。記憶が甦ったのか?一瞬、彼は脱兎の如く逃げ出した。その行く手にトラックが立ちふさがった。あっという間の出来事であった。目撃者のひとり、ピエールのなぐさめの言葉に、テレーズは一人言のように呟いた。「寒くなったら戻ってくるかもしれない。冬を待つんだわ」

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

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映画レビュー

4.0古き良きフランス映画?

2023年4月22日
iPhoneアプリから投稿

本当に行方不明の夫なのか、別人なのか?夫と信じたい妻は、希望に生きる。映像の撮り方が味深い。

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adamsmith

4.0戦争の悲劇を言葉ではなく、記憶喪失の男の哀しげな眼差しとテレーズの...

2022年8月6日
iPhoneアプリから投稿

戦争の悲劇を言葉ではなく、記憶喪失の男の哀しげな眼差しとテレーズの交錯する微かな希望と喪失感で心に語りかけてくる。抑えていた感情が溢れてしまうテレーズ、背を向けて逃げていく男の後ろ姿があまりにもつらかった。

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tsumumiki

3.5戦闘シーンがなくても戦争は描けるという見本

2020年7月23日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

戦後16年のフランス。戦争で記憶を失った男と、夫が行方不明となった女。その男に夫の面影をみて、夫だと確信しようとする女。男の記憶は最後まで戻らないと思いきや。。

派手な戦闘シーンは一切ないまでも、戦争のやるせなさを感じさせる脚本。全編モノクロだがリマスター版でとてもきれい。記憶をからませて時間軸を感じる映画。

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菜野 灯

2.016年にもわたる不在

2020年5月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

容姿も違う、声も違う、現れた男は本当にアルベールなのか。
テレーザが思い込もうとしているだけなのか。
アルベールはオペラが好きだったというわけでもないのに。

川辺で声をかける前にテレーザが彼の一挙一動を見つめるシーンが長くとられていて、印象的な場面だった。

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カメレオン
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