ウェールズの山

劇場公開日:

解説

第一次大戦後の英国ウェールズの小村を舞台に、ある丘の測量結果をめぐる騒動をハートウォーミングなタッチで描く一編。ウェールズ出身のクリストファー・マンガーが、故郷の伝説を基に自ら監督、脚本。エグゼクティヴ・プロデューサーは「大地と自由」のサリー・ヒビンと、ロバート・ジョーンズ、ミラマックスを率いるボブ&ハーヴェイ・ワインスタインが担当。主演は「いつか晴れた日に」のヒュー・グラント。共演は「泉のセイレーン」のタラ・フィッツジェラルド、「スナッパー」のコーム・ミーニー、「ジム・キャリーのエースにおまかせ!」のイアン・マクニース、「フォー・ウェディング」のケネス・グリフィス、「バック・ビート」のイアン・ハート。なお、劇中の村人たちの多くがロケ地ウェールズの人々から選ばれ、物語さながらに丘の盛り土作業に従事したという。

1995年製作/99分/イギリス
原題:The Englishman Who Went up a Hill But Came Down a Mountain
配給:ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン
劇場公開日:1996年5月11日

ストーリー

1917年のある日曜。ウェールズのとある小村を二人のイングランド人が訪れた。ジョージ・ガラード(イアン・マックニース)とレジナルド・アンソン(ヒュー・グラント)、彼らはその地の“山”フュノン・ガルウの測量にやって来た技師だった。二人は“好色”モーガン(コーム・ミーニー)の宿屋に泊まるが、測量の噂はたちまち村中に伝わり、フュノン・ガルウの高さをめぐって話題はもちきり、賭けまで開帳される始末。フュノン・ガルウこそは、歴年、侵略者から村を守ってきた、村人の誇りなのだ。だが測量の結果、フュノン・ガルウは標高299メートル、“丘”に過ぎないことが分かり、村は騒然となった。“山”と認められるには、305メートルの標高が必要なのだ。集会所で、事態を話し合う村人たち。モーガン、そして彼と犬猿の仲のジョーンズ牧師(ケネス・グリフィス)の提案に、一同の見解は決した。一致団結“丘”を“山”にするのだ。翌朝、大作戦が始まった。まず、技師たちの車をわざとエンコさせ、足どめに成功。一方、老若男女、子供たちまで総出で、フュノン・ガルウの土盛りが始まった。鉄道までも操作して、足どめする村人たちに、お手上げとなるガラードとアンソン。挙げ句、ベティ(タラ・フィッツジェラルド)という娘まで現れて、色仕掛けで迫るが、そんな村人たちのすったもんだに、若いアンソンは心動かされていく。しかし、村人たちの奮戦むなしく、木曜、無情の雨が降り出し、盛り土は無惨にも流れ出してしまう。技師たちが現れてから一週間の日曜の朝、二つの奇跡が起こった。雨が止み、モーガンとジョーンズ牧師に対話が成立したのだ。今日が最後のチャンスだった。安息日だが、ジョーンズ牧師自ら、率先して最後の盛り土が始まった。盛り土を安定させるため、ラグビー場の芝生までが剥がされるが、教師デーヴィス(ガーフィールド・モーガン)ももはや何も言えなかった。今やアンソンまで村人と一つになり、盛り土を手伝っていた。日が暮れる頃、一見壮健だが実は年齢82だったジョーンズ牧師が倒れ、静かに息を引き取った。彼はその場で盛り土に葬られた。日は没し、測量は不可能、全ては水泡に帰したかに見えたが、この村を、ベティを愛し始めたアンソンの心は揺らいだ。結局、ベティと共に、フュノン・ガルウで日の出まで夜を明かすアンソン。翌朝、測量したアンソンは、フュノン・ガルウの標高が306メートルとなったこと、ベティと婚約したことを一同に告げた。ここに“山”が生まれ、一つの愛が成就した。この物語が、今でもウェールズの人々に語り継がれて、生きているのである。

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映画レビュー

4.0山に拘るウェールズ人の誇りをユーモア豊かに描いたイギリス映画の佳作

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

305メートル以上なければ山ではない、たったこの一つの事柄でストーリーが出来、役者が揃い物語を語り、音楽が奏でられ、映画が完成する。現在から1917年に遡り、お爺ちゃんが孫に語り掛ける口調が、映画のテンポと音楽のリズムに見事に一致して、心地良い流れのある良心作。イングランド人とウェールズ人の民族対立を基調に、イギリス映画の上質なコメディセンスで登場人物たちが人間味豊かに描かれている。また、ジョン・フォード監督の名画「わが谷は緑なりき」を彷彿とさせるウェールズ魂があって、個人的には大好きな作品。ヒュー・グラント演じる嫌味のない二枚目青年が、そのウェールズ魂に自ずと共鳴していくところがいい。そして、撮影が素晴らしい。例えば、ある青年が丘の麓にひとり取り残されて、村人たちが数珠つなぎで登っていく山肌を見上げていくカットのティルトアップ。その視線の先の視界を見て意を決した青年が、土を運び登っていく心境表現と、その自然の風景の美しさ。言葉では言い表せない映画的な表現が感動を呼ぶ。欲を言えば、夜明け前の山頂で主人公と抱き合う婚約者の帽子が風に吹かれて飛んでいくシーンはあるのだが、空と土と丘と人と雨の世界に、もっとまた違った風の描写が欲しかった。
ラスト、登場人物の子孫たちが頂上で手招きしていると、山の景色が現在に変わり、再び村人たちが土を運んでくる。測り直したら303メートルという、ユーモアに富んだオチがまたこの映画の面白さであり、語りの優しさである。そして、最後までウェールズ魂を感じさせてくれる。

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Gustav

4.5名作。測量士から6m足りず丘認定された村の誇りの山を、山とすべく6...

2017年9月5日
iPhoneアプリから投稿

名作。測量士から6m足りず丘認定された村の誇りの山を、山とすべく6m盛り土する。面白いだけじゃなく熱いとこもありかなり良かった。

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collectible

3.5ゆるゆる

2016年5月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

昔からの言い伝えや「伝説」と言うのは実際にあった事なのか?
山と丘、その差は大した事ないように思えるけれど、村に住む人にとっては一大事のようで、村人一丸となって丘を山にする為に盛り土する。
言い伝えが事実なのか?作り事なのか?
いずれにせよ「伝説」があると言うだけでもちょっと羨ましい事だなと感じる。
映像が綺麗。村人達もユニークな人達でほんわかする映画でした。

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kazuyo

4.0地味ながら良作

2015年3月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

幸せ

云い伝え、とまではいかない割と近い昔の話。
もう少しシリアスな映画かと思っていたのだけれど、良い方向の意味で裏切られた。
軽毒舌の効いた台詞回しと、村社会ぽい野蛮さは見ていて微笑ましい。
悪人を存在させない、見方によってはぬるい展開も、たとえば描く対象が古き良き時代という設定であれば何らの嫌悪を抱くものではない。
ただ、さっき死んだ神父さんを踏んづけてのキスはさめる。
美しい土地の映像は目にいいです。

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okaoka0820
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