劇場公開日 1965年10月9日

赤い砂漠のレビュー・感想・評価

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4.0殺伐とした現実の中での突破口

2022年10月5日
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知的

何となく憂鬱にさせる映画ではあった。けれど、投げかけてくれているものには深いものを感じた。

ジュリアーナはふとしたことがきっかけで、心のバランスを崩し、まわりとの違和感や不安感に囚われ、精神的に苦しむ。
その、彼女のまわりとは、映し出される工場の労働の様子、灰色の空、汚れた川。(ラヴェンナの街に一度行ったけれど、あの街にこんな側面があったとは…) そして人々の生活の仕方や内面も描写されてくるが、それらはハッキリ言ってこちらも観ていて退屈だった。そこにあるのは、金のために働く、セックスする、惰性でダラダラと遊ぶ。それだけのようにみえる。

ジュリアーナには店を開きたいという願望があった。それは、人と人とのつながりにおいてもっと素朴で手応えのあるものを感じたい、という自分の内なる欲求を、直感的に感じていたからなのだろう。

彼女は苦しんだ末、やっとひとつの手応えを掴んだ。子供だった。
子供への愛情。それが彼女にとっては、唯一、人間的で自分らしさを感じるものだったらしい。

殺伐とした現実社会において人間性を見失わないための突破口は何か?ひとつは、家族への愛情、ということになるのだろうか。

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あま・おと

3.5正しく病んでいる唯一の人

2022年5月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

ジュリアーナは唯一、自然で豊かな髪を持っている。他の人は男女共に乱れないきちっとしたヘアスタイルだ。無機質で灰色の巨大な工場に煙突と大型船、騒音は神経に障る金属音、変な色の煙に汚い水、悪臭もするだろう。そんな中で雇う側はどんどん豊かになり、精神を病みながらも給料が良ければ自分の時間と労働力を提供する雇われる側。社会が変わる中で豊かで自然の美しい髪を持った彼女だけが恐怖と不安感を持ち悩み苦しんでいる。

どこの国も「先進国」になり豊かになり今の社会に繋がっている。そういう時代の変化の中で、自分の居場所を見つけられない、誰からも必要とされない自分に苦しんだ人が確かにいたことをこの映画は教えてくれる。

モニカ・ヴィッティの美しさは見事としか言えない。彼女がはおるコートはどれも似合っていて素敵だ。特に最初と最後のグリーンのコートは丈も袖丈も色も美しい!素敵。

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talisman