愛の泉

劇場公開日:

解説

在伊中のアメリカ作家ジョン・H・セコンダリの小説より、「真紅の女」のジョン・パトリックが脚色し、「百万長者と結婚する方法」のジーン・ネグレスコが監督する1954年作ロマンティック・コメディ。製作は「真紅の女」のソル・C・シーゲルである。撮影は「悪の花園」のミルトン・クラスナー、音楽は「大砂塵」のヴィクター・ヤングの担当。「一ダースなら安くなる」のクリフトン・ウェッブ、「我が心の呼ぶ声」のドロシー・マクガイア、「アパッチ(1954)」のジーン・ピータース、「忘れじの面影(1948)」のルイ・ジュールダン、「月蒼くして」のマギー・マクナマラ、「裸足の伯爵夫人」のロッサノ・ブラッツイなどが出演する。

1954年製作/102分/アメリカ
原題:Three Coins in the Fountain
配給:20世紀フォックス[極東]会社
劇場公開日:1954年11月20日

ストーリー

ある日、アメリカ娘マリア(マギー・マクナマラ)が、ローマに職を得にやって来、彼女を呼びよせたアニタ(ジーン・ピータース)に会った。そして、マリアは、アニタとアメリカ人作家シャドウェル(クリフトン・ウェッブ)の秘書をしているフランセス(ドロシー・マクガイア)が同居している贅沢なアパートに住むこととなった。マリアの初出勤の日、フランセスは2人を自分の車に乗せてやった。彼女は途中、トレヴィの泉で車を止め、泉に銀貨を投げ入れた。泉に銀貨を投げてローマに再び帰りたいと祈ればその望みがかなえられるという伝説があるのだ。その夜、役所の局長夫人主催のカクテル・パーティにマリアもアニタも招かれ、マリアはディノ公爵(ルイ・ジュールダン)に心を惹かれた。アニタは同じ局の伊国人ジォルジォ(ロッサノ・ブラッツイ)とひそかに愛し合っており、ジォルジォから田舎の彼の農場へ招待された。土曜日、2人が乗った車が市を出るとき、局長の車と出合った。局では米伊局員の交際を禁じていた。一方、マリアはディノ公爵からヴェニスへ誘われたが、フランセスも一緒について来たので、公爵はくさってしまった。農場を訪れたアニタは、ジォルジォと離れられぬ仲になったけれど、そのため翌日彼は局規を破ったかどでクビになった。アニタはマリアが密告したと誤解し、アパートを出てジォルジォの家へ行った。しかし失職したジォルジォは結婚することができない。2人は結局別れねばならなかった。マリアはフランセスに智恵をつけられて、ディノ公爵の心を巧みにとらえたが、最後にそのことを告白して公爵をがっかりさせた。フランセスも淋しくなり、帰米するといい出したが、彼女がいなくては困るシャドウェルは彼女に求婚した。しかし、シャドウェルは医師の診断で脳腫と分かり余命の少いことを知って求婚を取り消した。だが、彼女の誠意に打たれて婚約をしなおした。フランセスは失望してアメリカへ帰ろうとするアニタとマリアをトレヴィの泉に呼び、希望はあくまで捨ててはいけないと説いた。そこへ、シャドウェルとディノ公爵と、シャドウェルの骨折りで復職したジォルジォが揃ってやって来た。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第27回 アカデミー賞(1955年)

受賞

撮影賞(カラー) ミルトン・クラスナー
主題歌賞

ノミネート

作品賞  
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映画レビュー

4.5隠れた名作!

2019年6月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

フランク・シナトラの主題歌はいきなり冒頭から始まります
ムードのある素晴らしい曲で映画音楽大全集にも入っていたりします

愛の泉とはトレビの泉とのこと
コインを投げると願いが叶うという風習を有名した映画だそうです
トレビの泉は冒頭の主題歌のタイトルバックと序盤のコイン投げのシーン、そしてラストシーンの都合三回登場します
ローマの休日の翌年の製作ですから、その大ヒットを受けてもっとローマをカラーでお見せしましょうというような、基本イタリア観光映画なんだろうと斜に構えて侮って観てはなりません
ラストでは不覚にも泣きそうになりました

ローマで働く三人の米国人女性
結婚適齢期になったばかりの若いマリア
憧れの若きしかもハンサムな公爵との玉の輿を狙います
適齢期を過ぎようとしているアニタ
イタリア人との職場恋愛禁止のオフィスで実らない恋を諦めて結婚すると嘘をついて帰国しようとしています
気が付けば未婚のまま40歳もとっくに越えてしまったフランシス
15年も女性の最も美しい時期のほとんどすべてを、もはや老人となった有名作家への実らない恋を秘めたまま彼の秘書として仕えています

三人それぞれの恋模様が美しいローマ、ベニスの風景を背景に描かれます
カメラが美しく明るい陽光の下のイタリアを、これまた美しい構図で捉えています
風景だけロケして、あとはスタジオのセットでというような安直な作品ではありません

マリア役のマギー・マクナマラは、小柄で細くて少女のようで明らかにオードリー・ヘップバーンを本当はキャスティングしたかったんだろうと直ぐわかる配役です
髪型までローマの休日でのあのショートカットに似せてます
それなりに美人なのですが、ヘップバーンにはとても及びません
どうしても彼女がヘップバーンならと脳内で変換して観てしまいます
もしヘップバーンが出演していたなら大ヒットして名作入りしていたと思います
といってマギー・マクナマラが決して悪い役者でもなく、しっかり頑張っています

美術館で付け焼き刃の美術の知識で若き公爵の気を引こうとするのですが、適当な感想を述べて彼が感心するというその新印象派の絵画がどうみてもその作風ではなくキュビズム風で彼の趣味も実は大したことがなさそうというシーンは可笑しくて可笑しくてたまりません
彼女も一番可愛く写っているシーンです

終盤は一番年上のフランシスの恋の行方がクライマックスになります

帰国する決心をした彼女が語ります
このまま夢も希望もなく、見知らぬ土地で独身で要るよりはマシです

この本音の吐露から一気に物語が動きだし、ラストシーンにまで三人の恋は一直線に走り出します

三組のカップルのハッピーエンドで映画が終わる時、なんと楽しい映画だったんだろうととても幸せな気持ちで胸が一杯になります
隠れた名作とはこのことだと思います

やっぱりイタリアに海外旅行に行きたくなりました

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あき240