劇場公開日 1992年5月9日

「みなさんの心にもオアシスはありますか?」愛人 ラマン さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0みなさんの心にもオアシスはありますか?

2015年8月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

オアシス【oasis】
1 砂漠の中で、水が湧き、樹木の生えている所。
2 疲れをいやし、心に安らぎを与えてくれる場所。憩いの場。「都会の―」
私にとっての心のオアシスは、何故かこの映画に登場する一室です。

マルグリット・デュラスのベストセラー自伝小説の映画化。

15歳のフランス人の少女と、かなり年上の華僑の男性との恋の物語です。仏領インドシナ(ベトナム)の人種差別と貧富の差を背景にし、二人の不安定で純粋な愛情が、官能的に描かれています。
男は少女を愛していると云い、少女は愛していないと云う。少女は貧しく、息苦しい家庭環境からの逃避と快楽とお金の為に、男との逢瀬を重ねます(と、割り切ります)。その二人が通う部屋は、ちょうど市場の中心部にある。

薄暗い部屋には、劣化したカーテンから差し込む微かな光だけ。既に枯れてしまった植木が二本と、柔らかく弛んだシーツがかかる大きなベッドのみ。アジア特有の湿度と熱気の籠もるその簡素な部屋に、外から埃っぽい土の匂いや喧噪が、時折入り込む。

疲れると私は、この部屋を思い出します。そして、想像の中でベッドに横たわって、目を閉じる。殆どは一人です。時に夫と、でも時には、昔とても愛した人と。でもそれは、罪なんでしょうか?思うことも、駄目でしょうか?

誰だって、心の中にオアシスがある。現実から逃避し、静かに眠りたい場所がある。

みなさんの心にも、そんなオアシスはありますか?

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さぽ太