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解説

2000年の<PFF(ぴあ・フィルム・フェスティバル)アワード>でグランプリを含む4賞を受賞した李相日(リ・サンイル)が、スカラシップ権を得て監督したもので、李にとって初めての長編となる。前作「青~chong~」が高校という「限定された空間」の、恋と友情という「絞り込んだ話」だったのに対し、この作品は、東から北へと「移動する」ロードムービーであり、性別も職業も年齢も「違う5人の話」となっている。時に深く、時に浅く、それまでまったく知らなかった他人とかかわることで自分の罪を知り、罰を受け、かすかだが確かな希望を感じるまでの道のりを、力強く描く。

ストーリー

松田周史(沢木哲)は、京浜地区に住む工業高校3年生。現在にも将来にも意味を見出せず、「10年後の自分へ」というレポートを提出させようとする学校への違和感も、大きくなるばかりだった。その苛立ちから、周史は校舎の屋上に干してある作業着に火をつける。宮路大輔(光石研)は出世しそこねたヤクザ。腕が立ち度胸があるにも関わらず、組織の中でうまく立ち回ることができず、43歳という年齢で組の集金係に甘んじている。ある日、弟分の北島(森下能幸)とスロット店からショバ代を回収するが、北島に金を持ち逃げされてしまう。「最悪だよ」が口癖の黒崎大吾(村上淳)は、アルコール依存症のタクシー運転手。気は優しいが、ここ一番で我慢が足りない性格もあって、これまで数々の失敗を繰り返し、今は叔父の世話で何とか働いている。ビールを飲みながら車を走らせていると、飛び出してきた自転車に衝突してしまう。その自転車を運転していたのが周史だった。主婦の相川美佐(麻生祐未)は、念願だった一戸建てのマイホームを手に入れ、新しい暮らしに張り切っている。しかし息子が学校でいじめられていることに気付かず、パート先のコンビニでは要領が悪く、彼女自身のイメージと現実の人生にギャップは大きい。自宅が北海道だと言い張る周史を送るため、黒崎は仕事を放り出してタクシーを北に走らせることに。しかしほどなくラジオのニュースから、周史が父親を殺害したあと自転車で走り去ったまま行方不明になっている高校生であることを知る。周史は、黒崎をナイフで脅しながら旅を続けるが、ファミレスの駐車場で、車の中に置き去りにされた赤ん坊を助けようとして騒ぎを起こし、その間に黒崎に逃げられてしまう。そんな周史の横顔を、ファミレスから見つめる女子高生がいた。修学旅行に来ていた上原はるか(前田綾花)は、周史に魅きつけられる。自転車ひとつの身になった周史は、寒さや空腹から絶望を感じて自殺を図ろうとする。それを助けたのが宮路だった。余計なことは聞かずに自分を受け入れてくれた宮路に、周史は心を開く。のどかな冬休みのような周史と宮路の日々は、しかし組の追っ手によってピリオドが打たれる。宮路は自らの手で始末した北島が最後まで気にかけていた娘の手術代として組の許可なくショバ代を回収し、北島の実家に届けていたのだ。それは、宮路の組からの脱退と、命が狙われることを意味していた。死を覚悟した宮路は周史に、函館にいる自分の娘を渡してほしいと、北島の娘からもらったカイトを託す。「またいつか会おうな」と言って。周史は、カイトを縛りつけた自転車に乗り、函館を目指す。子供がいじめられていると気付いたものの、逆にいじめっ子の母親に言い負かされてしまう相川に、さらに大きな悲劇が起こる。リストラされた夫が、家に固執する彼女から逃れて家を出てしまったのだ。精神的にも経済的にも彼女は追い詰められていく。職場に戻った黒埼は、周史のことが気になって仕方ない。置き去りにした罪悪感より、周史の内に感じた深い傷が放っておけなかったのだ。黒崎は、周史の荷物にあった1枚のはがきを頼りに、彼が北海道で会いたがっている人物を探しにいく決意をする。函館でのわずかな手がかりも断たれた周史は途方に暮れて港でカイトを飛ばす。同じ頃、援助交際で警察に捕まり学校も退学になったはるかは、あてもなく街をぶらつく。港ではるかに出会った周史は、彼女が宮路の娘だと知るのだった。周史は、はるかの部屋に宮路から預かったカイトを残す。警察に父の死を知らされたはるかは、そのショックからかつて関係を持った中年男と再びホテルヘ。それを見かけた周史は、部屋へ入ろうとする男を全身で阻止する。男が殴り疲れるほど痛めつけられても抵抗しない周史。男を追い返した後、公衆電話からホテルにいるはるかに電話をした彼は、自分が宮路から言われた言葉をはるかに伝える。「10年後にまた会おうな」という言葉とともに……。...

作品データ

製作年 2002年
製作国 日本
配給 ぴあPFF事務局
上映時間 118分

提供:株式会社キネマ旬報社

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