アレクセイと泉

劇場公開日:

解説

チェルノブイリ原発事故で被災した村に、今も暮らす老人たちとひとりの青年の生活を見つめた長篇ドキュメンタリー。監督は「ナージャの村」の本橋成一。撮影を「ナージャの村」の一ノ瀬正史が担当している。第52回ベルリン国際映画祭ベルリナー新聞賞&国際シネクラブ賞受賞、芸術文化振興会映像芸術振興事業作品。スーパー16ミリからのブローアップ。

2001年製作/104分/日本
原題:Алексей и Крыница
配給:サスナフィルム=BOX東中野
劇場公開日:2002年1月20日

ストーリー

ベラルーシ共和国ゴメリ州、ロシアとの国境に接するブジシチェ村。1986年4月26日、180キロ離れたチェルノブイリ原子力発電所で起こった爆発事故によって放射能に汚染されたこの村には、現在(2001年)、55人の老人と小児麻痺の後遺症のあるアレクセイという1人の青年が暮らしている。6千人いた住民は、政府の移動勧告によって村を去った。何百年、何世代に渡って大地を糧に営みを続けてきた彼らの生活は昔と変わらない。収穫の夏は1年で一番忙しい季節。ジャガイモの収穫には、町に出て行った息子たちも手伝いに帰って来る。夏の終わりには収穫祭。そして、厳寒の冬には川や池に張った氷を割って川魚漁も行われる。しかし、村や周囲の森には今も放射能が検出されているのだ……村人たちの心の拠り所となっている百年の泉と呼ばれる泉を除いて。その泉は、事故以来、一度も放射能が検出されることなく、綺麗な水を混々と湧出している。ある日、泉の隣に作られた洗濯用の槽の木枠が修理されることになった。それが最後の修理になるだろうと心中で思いながら、作業を手伝うアレクセイ。やがて、木枠の修理が終わると、司祭によって泉に祈りが捧げられ、イコンが飾られた。

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映画レビュー

3.5【チェルノブイリ原発事故で被災したブジシチェ村の住人たちに敬われる聖なる泉は、放射能をも撥ねかえす。大地の力強さと「本当の豊かさとは何か」を記録するドキュメンタリー映画。】

2024年1月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

幸せ

■かつては600人が暮らしていたというブジシチェ村の住人は、原発事故後には55人の老人と1人の若者・アレクセイだけになった。
 村の学校跡や畑、森、採集されるキノコからも放射性物質が検出されるが、村人の生活に欠かせない“泉”からは検出されなかった。

◆感想

・今作ではチェルノブイリ原発の事故シーンは一切映されない。

・只、被爆したブジシチェ村の住人達が、聖なる泉を敬い、放射能を気にリチーシキというキノコを採る姿や、祭りの姿が淡々と描かれる。

<驚くのは、ラストテロップで流れた数字である。
 ブジシチェ村の各所では確実にガイガーカウンターで測った数値が出されるが、聖なる泉の数値は0である。
 泉の底から滾々と湧き出す水のシーンが度々映されるが、大地の持つ奇跡の力なのであろう、と思ったドキュメンタリー作品である。
 故、坂本龍一氏の静謐な音楽も、彩を与えている作品でもある。>

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