見たい度推移(赤線は公開日)


「赫い髪の女」や「Wの悲劇」などで知られる脚本家・荒井晴彦の監督デビュー作。実験的な手法で綴られた鈴木貞美の同名小説をもとに、中年男女4人の愛憎劇を丹念な描写で紡いでいる。仕事のこないシナリオライター・善彦は辞書校正のアルバイトを、友人の良介の留守宅で行うことになった。そこに、良介の妻・綾に呼ばれた麗子もやって来る。二人は初対面だが、ある共通点があった。かつて善彦は綾と、麗子は良介と、関係があったのだ……。ふられた者同士が不在の夫婦を演じるという屈折した愛情表現。その舞台劇のように緊迫した心理ゲームを捉えた前半から、映画は4人それぞれが1対1で向き合うシークエンスを挟み込みつつ、やがて物語の核心に迫っていく。リアリティーみなぎるセリフの数々、主演4人の静かで激しい演技も素晴らしいが、なんといっても演出が見事。奇をてらうことなく、過去にとらわれた者たちのどうしようもない感情をすくい上げている。





