不死鳥(1947)

劇場公開日:

解説

原作の川頭義郎は現在大船の助監督。監督並びに脚色は「わが恋せし乙女」「結婚(1947)」の木下恵介。同じく協力者楠田浩之の撮影。出演者は「女優須磨子の恋」の田中絹代に、佐野周二推薦佐田啓二が相手役としてデヴューするほか「二連銃の鬼」の小杉勇「処女は真珠の如く」「若き日の血は燃えて」の山内明が共演する。

1947年製作/82分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1947年12月13日

ストーリー

程近い海から潮の香が、静かな波の音にのってくるある初秋の朝。未亡人といえば世間一般では、かげの女のようにとかく忘れられがちなものなのに--私がどんなに今幸福であるか、誰も知らない--と小夜は思うのであるが、誰も知らない--と小夜は思うのである。真実こそ人間最上のものである。真実に生き抜く人こそ真に幸福な人の姿である。小夜子は恋に生き、愛に生き、はるかな希望を抱いて明日も又生きようとするのだった。他のどんな愛人同志でも、私達ほど愛し合うことは出来ないと過去の日を誇らかに思い出すのだ。その頃は小夜子は女学生服、真一は一高の制帽姿だった、そして学校の生き帰りにいつの日からとなく乙女心に印象づけられていった。真一の落した定期券を小夜子が届けたことによって、二人の青春が急速に接近していった。夢のような四年は、テニスコートの春、ドライヴの夏、音楽会の秋、ゴルフ場の春と過ぎていった。真一の頑固な父は二人の仲を頑強に反対した。やがて真一の入営も近づいたが、突如、余りにも突然、小夜子に不幸が襲ってきたのである。父の死!弟の病!無情にも軍の命令は、その小夜子を一人残して行かなければならなかった。真一が一週間の休暇で帰ってくるという報があった時、突然真一の父が疎開先の小夜子を訪れたのである。今正に息をひきとる弟を安心させてやってくれと、涙ながらの小夜子の真心は、いかな頑固な父親でも心打たれないはずはなかった。六年間の二人の真剣な愛が、結婚せずしてどうして一生の悦びとすることが出来るだろうか--そして晴れて八坂家の長男、真一の妻として過した日は、悲しい弟の死にあった小夜子ではあるが、夢としか信じられない一週間だった。私がこんなに愛しているんですもの--あなたは絶対に死なない、死なない--と信じていた真一が戦死したのである。だが、愛に生き抜いた小夜子は幸福だった。八坂家では今夜、真一の忘形見健一郎が、大勢の家族から誕生の祝福を受けていた。真暗な洋間に四本のローソクを立てたケーキが運ばれ、歓喜に満ちた無心な健一郎と共に光を吹く、一つ、二つ、三つ、小夜子の笑顔も最後の四本目で消えていった--。

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映画レビュー

3.0『陸軍』の焼き増し

2024年1月3日
iPhoneアプリから投稿

木下恵介と田中絹代のタッグといえば1943年に公開された『陸軍』が有名だ。本作は太平洋戦争末期に帝国陸軍主導で制作されたにも関わらず、そこには木下恵介の戦争に対する激しい憎悪と失われゆく命への哀惜が込められており、今では専ら反戦映画の代表作として知られている。

戦時中、木下恵介は『陸軍』を撮ったことで軍部から反日分子と睨まれ、しばらくの間映画制作を禁じられていたのだが、戦後に日本映画界がGHQの民主化政策下に置かれたことで復権し、『大曽根家の朝』などの反戦・反軍国主義を制作した。

さて、本作は『陸軍』の4年後、つまり『大曽根家の朝』と同年に公開された作品であるのだが、反戦映画としては同じく田中絹代が主演を張った『陸軍』に劣る。

本作では、未亡人の田中絹代が戦死した佐田啓二との過去を回想するという体裁で青春の瑞々しさと戦争の愚かしさが描き出される。のちの木下の代表作『野菊の如き君なりき』にも通じる回想形式のナラティブは本作に端を発するものだろう。現在時制でのちょっとした会話や小物などから悲壮な過去を匂わせる巧みな演出には脱帽した。

ただ、過去時制において展開される悲劇は有り体にいえば平凡で、なおかつ普遍性もない。戦争に赴く男と取り残される女という取り合わせは反戦映画においてはあまりにも手垢にまみれている。それでいて田中絹代と佐田啓二の家柄は没落気味とはいえ屋敷に女中を置ける程度のブルジョア家庭であり、いまいち共感し難い。『大曽根家の朝』でみられたような自らのブルジョア性に対する自認も欠けており、ひたすらエモーショナルな「悲劇」が展開していく。

本作最大の見せ場は田中絹代が佐田啓二の父親に自分たちの結婚を直訴するシーンだが、ここでも田中絹代の演技力に全てを一任している節があり、それはつまり『陸軍』の焼き増しでしかない。

戦後の田中絹代といえば、アメリカにかぶれて国内の大衆の反感を買ったエピソードが有名だが、自らのブルジョア性に無自覚でありながら反戦という卑近なエモーションに便乗して涙を流す本作の田中絹代はまさに「戦後の田中絹代」の兆候だったといえる。

吉村秀夫が『二十四の瞳』『喜びも悲しみも幾年月』等の木下の反戦作品を「過度なエモーショナリズム」と批判していたが、本作のほうがよっぽど過度にエモーショナルな凡作だったように思う。

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因果

5.0傑作中の傑作。涙無しには見られない作品😢

2017年4月21日
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鑑賞方法:DVD/BD

怖い

泣ける

悲しい

傑作中の傑作。涙無しには見られない作品😢

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モモッシー

5.0台詞一つ一つが美しかった。ヒロインに感情移入してしまって、泣いてし...

2016年7月31日
Androidアプリから投稿

悲しい

泣ける

台詞一つ一つが美しかった。ヒロインに感情移入してしまって、泣いてしまった。

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もっもしー
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