劇場公開日 1983年11月12日

白蛇抄のレビュー・感想・評価

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5.0西洋的な概念のファムファタルを、舞台を寺におくことで煩悩という形で無理なく日本の物語としています

2022年3月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

強烈な映画を見ました
度肝を抜かれました
ここまで凄い映画であったとはと圧倒されました

白蛇は弁財天の遣いとされて金運・出世・財運をもたらすと言い伝えがあり、白蛇が現れる夢は大吉夢といいます
中国の伝説では、白蛇の妖怪が白衣の美しい女性に化けて、淫慾を満たしその心肝を食うために若い男性を攫うというものです

主人公のうたはこちらです
ファムファタルそのものです
ファムファタルとは男を狂わせ破滅させてしまう運命の女のこと

本人は何も悪くないのに、彼女の女の肉体の魅力
それだけでなく、声、物腰、雰囲気、そんな彼女がそこにいるだけで関わる男全てを皆狂わせて破滅させてしまうのです

最初の夫は火事で死に、男の胎児は死に、彼女を寺に置いてくれた住職は体を壊した末に彼女の体の色に狂い息子に蹴り殺されてしまいます
その息子、昌夫も彼女の魅力に狂い破滅します
彼女を滝壺から救いだした地元警察の村井刑事もまた彼女の肉体に触れたが為に狂い、死んでいきます
最終的には自らまで破滅します

西洋的な概念のファムファタルを、舞台を寺におくことで煩悩という形で無理なく日本の物語としています

とにかく小柳ルミ子が圧倒的な存在感と演技力を示します
日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞しているのは納得です
というかもっともっと映画に出て欲しかったものです
歌手が本業でそちらの方を優先されるのは致し方ないでしょうが、ここ30年ほども活動が迷走気味であったのは残念な限りです

日本映画界にとって希有な逸材であったはずです
もったいない限りでした
五社英雄監督や降旗康男監督の作品に主演女優で配役されていならどれほどの名作が生まれたことでしょう

小柳ルミ子31歳
女の魅力が満開です
細い骨格なのに肉感的なのです
柔らかい線が肩にも、腰にも、背中にも、太ももにもあります
だらしなく崩れている柔らかさではありません
均整の取れたプロポーションでそうなのです
だから着やせしているのに、薄いサマーセーターや後ろボタンの白いブラウスの胸を尖った乳房が突き上げているのです
ふわっと女性の良い匂いが画面から漂うような錯覚が起こります
人柄も柔かく福岡出身の彼女が京都弁を自然に操っています

こんな女性が身近にいたら幸せ?
いいえ!
危険です
身の破滅です
さっさと彼女から距離を置かなければ狂わされてしまいます
人生も家庭と仕事も破滅させられてしまうからです

しかし本当のファムファタルにはそんなことは通じません
一目見ただけでもう男を虜にしてしているのです
その場を離れることができたとしても、遅効性の毒物をあおったかのようにじわじわと彼女に心を掴まれてしまうのです

彼女は何も色目を使っている訳でもありません
普通に男たちと接しているだけなのです
なのに男たちが勝手に彼女に狂い破滅していくのです

小柳ルミ子はこのファムファタルを完全に表現しています
これがファムファタルの恐ろしさだと納得の演技でした

恐ろしい存在です
しかし、このように分かり易い肉体的魅力であるのならまだ避けれます
もっと怖いのは、肉体的性的な魅力が外見に現れていないのに何故か男を狂わせる女性もいるのです
そのような存在にはいかなる抵抗も虚しいでしょう

本作の主人公は実は14歳くらいのまつのだったかも知れません
彼女は普通の女子中学生としてこの寺にやって来ます
しかし、うたと暮らしているうちに彼女もまた恐るべきファムファタルになってしまうのです
彼女こそその究極のファムファタルになっていく女性なのかも知れません
仙道敦子は出演時、実年齢も14歳
未成熟で細く固い、女性らしい線は骨格のみで、肉感的なものはまだ皆無です
それを新体操部のレオタード姿で見せて、小柳ルミ子との肉体の違いを対置して際立てて表現されています

クライマックスの大火の炎に照らされる彼女の泣き顔はファムファタルが次の世代の女性に乗り移ったことを示していました
まつのは、うた以上のファムファタルになるに違いありません
まだ少女、柔らかな曲線も肉も無いのに
性的な魅力は殆どなくまだ子供でしかないのに
なのに恐るべき結末に至るのです

白蛇は、滝壺に沈んでいたあるものをつつんでいた腹帯がほどけて水中で白く長く漂う影のことを指すのでしょう

そしてまた、終盤の夜に滝壺を見下ろす崖の上に立つうたの姿です
暗闇の中に青白く佇むうたを一瞬夏祭りの打ち上げ花火が白く照らしだすのです
まるで白蛇がいるかのように

感動の演出でした

いつの日にか、あなたのそばにファムファタルが現れるかも知れません
本作を観ていれば警戒できるでしょう
しかし無駄かも知れません
真のファムファタルなら一目見て二言三言言葉を交わしていたならもう遅いのです
彼女のことがだんだんと脳裏を占めだし、気がついたなら本作の住職や昌夫のように何もかも考えられなくなるのです

あなたが女性なら、自分がファムファタルかどうか
それはあなた本人にはわからないのです
結果だけがそれを教えてくれるのみなのです

改めてファムファタルの恐ろしさを知った映画でした

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あき240

3.5小柳ルミ子に尽きる

2020年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

主人公(小柳ルミ子)は滝に身投げするが、お寺の住職に助けられ、そのままお寺で暮らしている。
その後、住職はボケてしまい単なるエロ爺となり、主人公の体をむさぼる毎日だ。
高校生の息子(杉本哲太)が一人いるが、思春期で性欲が上がる一方だ。
運命に翻弄されている、としか言いようのない幸薄き女性を小柳ルミ子が熱演、裸身は芸術的だ。

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いやよセブン