拝啓天皇陛下様

劇場公開日:

解説

週刊現代連載・棟田博原作を「あの橋の畔で」の監督野村芳太郎と「東京湾」の多賀祥介が共同で脚色、野村芳太郎が監督した喜劇。撮影はコンビの川又昂。

1963年製作/98分/日本
原題:Dear Emperor...
配給:松竹
劇場公開日:1963年4月28日

ストーリー

山田正助はもの心もつかぬうち親に死別し世の冷たい風に晒されてきたから、三度三度のオマンマにありつける上、何がしかの俸給までもらえる軍隊は、全く天国に思えた。意地悪な二年兵が、彼が図体がでかく鈍重だからというだけで他の連中よりもビンタの数を多くしようと大したことではなかった。ただ人の好意と情にはからきし弱かった。入営した日に最初に口をきいてくれたからというだけで棟本に甘えきったり、意地悪二年兵に仇討してやれと皆にケツを叩かれても、いざ優しい言葉をかけられるとフニャフニャになってしまう始末だった。だが、中隊長の寄せる好意には山正も少々閉口した。営倉に入れられれば一緒につきあうし、出て来れば柿内二等兵を先生にして強引に読み書きを習わせる。昭和七年大演習の折、山正は天皇の“実物”を見た。期待は全く裏切られたが、この日から山正は天皇が大好きになった。戦争が終るという噂が巷に流れ出すと、山正は天国から送り出されまいとあわてて「拝啓天皇陛下様」と、たどたどしい手紙をかこうとした。が、それは丁度通り合わせた棟本に発見され、危く不敬罪を免れた。まもなく戦況は激化、満州事変から太平洋戦争へと戦線は拡がり、山正はその度に応召し、勇躍して戦地にむかった。そして終戦、山正にはただ住みにくい娑婆が待っているだけだった。懐しい棟本を訪れ、ヤミ屋をしたり開拓団に入ったりの生活をしていたが、同じ家に住む未亡人に失恋した日から山正は姿を消した。そして再び姿を見せた時、山正は女房になってくれるという女性を連れて来て棟本を喜ばせた。雪の降る朝、「酔漢トラックにはねられ即死」新聞は山正の死を伝えた。棟本はいい知れぬ悲しみに泣いた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0最高の映画。  軍隊で生きた愛すべき男の物語。

2022年4月10日
PCから投稿

反戦とかでもなく戦争賛美でもない。
軍隊でしごかれて恨みを持ち、反戦思想になる者もいる。
軍隊で、上官や戦友との出会いで、初めて自分の生きがいを感じた者もいる。
反戦でも戦争賛美でも無い。
愚直に生きた一人の男の物語。
大きな歴史のうねりの中で生きた。

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東條ひでき

4.0皮肉だけど愛もあり…

2021年5月8日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

滑稽だけど哀しみもあり…
たくましかった日本人のおかげで、現代があるんですねぇ…きっと。
人間同士の距離感が近い。僕はちょっと苦手だけど。
現代はコロナ禍で益々人の距離感は離れていくんでしょうね。

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哲也

3.5戦前から戦後の約20年の日本の軌跡の一端が垣間見える戦争喜劇にある客観的視座

2020年9月22日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、TV地上波

従軍作家として日中戦争の兵役に就いた棟本博の追憶で語られる、岡山歩兵第10連隊に同期入隊の山田正助の数奇な半生を描いた戦争喜劇。昭和恐慌の大不況下の昭和6年からサンフランシスコ講和会議を目の前にした昭和25年までの、軍部が暴走し始めた戦前の軍隊生活と敗戦の痛手から漸く独立国家として再出発する寸前の日本が描かれている。貧しい生まれの無教養で手癖も悪い山田が、普通の兵士たちが抱く軍隊の厳しさに服従する辛さに反して、衣食住に満たさせた軍隊生活に生きる活路を見出す皮肉が作品の主題となる。しかし、山田を演じる渥美清の名演により、生きる術のないひとり孤独な男の悲哀がユーモアを伴いながら表現されていて、日本の喜劇映画の様式でも個性的な作品に仕上がっている。興味深いのは、再招集の昭和12年、南京陥落の報を受けて戦争が終わると予想する兵士たちの姿であり、それでは困ると天皇陛下に直訴しようとする山田の無垢さである。
情緒的な表現を得意とする野村芳太郎監督の堅実で安定した演出や、川又昂の撮影と芥川也寸志の音楽もいい。特に天覧の秋季大演習の場面が素晴らしい。進軍する歩兵の列の間をゆっくりと進む白馬に乗った天皇陛下に、初めて謁見して親しみを覚える渥美清の表情が人の良さを表す。途中トーキー第一作「マダムと女房」と「与太者と海水浴」「子宝騒動」の映像が流れ、時代の雰囲気を出している。前半の面白さに比べて、後半が駆け足気味な点が惜しい。上流階級の戦争未亡人に片思いする山田に、後の寅さんが重なるところが愉しい。
棟本の妻役左幸子の安定した演技力と当時の個性的な俳優人、藤山寛美、桂小金治、西村晃、多々良淳、上田吉二郎、清川虹子、そして加藤嘉と共演者も観ていて飽きない。長門裕之、中村メイコ、高千穂ひづるも適材適所の配役。

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Gustav

3.5三八式歩兵銃どのー

2020年4月13日
スマートフォンから投稿

西村晃が桂小金治に絡んで嫁のノロケな手紙を読ませるが、内容が近所の娘を身売りさせる話で言葉を失う黄門様。
軍隊は天国じゃ。

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さすまー
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