長屋紳士録

劇場公開日:

解説

無声時代「東京の合唱」「生れてはみたけれど」「出來心」「大学よいとこ」等幾多の名作を生み、戦前「一人息子」「淑女は何を忘れたか」「父ありき」等を発表昨夏帰還した小津安二郎の再起第一回監督作品。脚本は「美人哀愁」以来「出來心」「浮草物語」「一人息子」「戸田家の兄妹」「父ありき」に至るまで数多くの協同作品をものした自身と池田忠雄の協同で、撮影には「鍵を握る女」「許された一夜」等の厚田雄春が当っている。小津作品のおなじみの俳優が顔をそろえている他、往年の名子役突貫小僧の実弟青木富廣が少年役で出演している。

1947年製作/72分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1947年5月20日

ストーリー

東京の焼け跡に復興の家がぼつぼつ建ちはじめ、昔なじみの顔もそろってきた。数年前夫を失い続いて一子をも失ったおたねは、たった一人で昔通りの荒物屋を開いている。ある日彼女の家の裏に住む占見登竜堂先生は一見戦災孤児のような少年幸平を拾ってきた。しかし自分で育てる力のない登竜堂はそれをおたねに押しつけた。おたねは内心甚だ迷惑に思ったが、別にどこへ行かすあてもないので仕方なく一夜だけ泊めてやる。そして翌日近所の家々を頼んで歩いたが、どの家庭を見ても、一人暮らしのおたね以上幸平を養うのに適した家はなかった。おたねは少年がかつて父と共に住んでいたという田舎の町へ、幸平を連れて出かけたが、求める家は見当らなかった。いまはおたねも幸平を捨てる訳にもゆかず、やむを得ずまた自分の家に連れ戻った。そして二人の生活が続き幸平の少年らしい仕草を見ているうち、おたねは自分の失った愛児の面影を想い出さずにはいられなかった。近所のどの家庭を見ても、皆子供を中心に幸福そうである。子供の良さは誰の子も同じではないか。おたねはついに幸平を我が子として育てようと決心する。やがては学校にも上げてやらねばなるまい。幸平もおたねになついてきた。しかしある日不意に幸平の父が訪ねて来た。彼は東京へ仕事を求めに来た時、幸平とはぐれてしまったのである。おたねは礼を言って去る親子を見送って、少年の本当の幸福をしみじみと願った。

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映画レビュー

5.0人情物語は苦い薬を飲ませるための糖衣だったのです

2023年1月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

昭和22年、1947年5月公開
戦後第1作です
戦争を挟んで5年のブランクの肩慣らしの一作ながら見応えはたっぷりです

戦後すぐの混乱期のお話
それを題名どおりなんだか落語の貧乏長屋のお話のような人情物語としてまとめあげられています

それでいてただの人情話で終わらない、そして戦後すぐだからこそのメッセージを終盤で発しています

敗戦の衝撃で、日本人は人間性を失った薄情で情けない人間にまで成り下がってしまっていないか?という告発に胸を突かれます

人情物語は苦い薬を飲ませるための糖衣だったのです

飯田蝶子の名演技をたっぷりと堪能できます
素晴らしい女優です

終盤に沢山泣かされました

小津監督らしい構図、映像もしっかりと観ることができます

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あき240

4.0戦後の混乱のなかの母性

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

小津安二郎監督の戦後第一作にして味わい深い作品。飯田蝶子のお人良しゆえの寂しさが滲む映画。戦後の苦しい時代、人の善意だけでは人を救えない、故に報われない、と色んなことを考えさせるが、作品はほのぼのとした人情もの。

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Gustav

3.0晩春、麦秋に比べると少し味気ない...。

2016年2月14日
iPhoneアプリから投稿

晩春、麦秋に比べると少し味気ない...。

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共感した! 1件)
Y.Yuki
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