劇場公開日 1981年1月30日

「水底に潜む泥の河〜〜」泥の河 星のナターシャさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5水底に潜む泥の河〜〜

2017年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

知的

昭和20年の終戦から10年経った昭和30年のお話。

何よりも、子供たちが素晴らしい〜〜。
公開当時、浜村淳氏の解説で
「屈折した子供心がひしひしと伝わってくる」と評された
あのシーンを実際に目にすることができて本当に良かったです。

劇中のセリフにもあるけど
戦争から必死で生きて帰ってきたのにフトしたことで
呆気なく死んでしまう人の悲しさや、残された家族の悲哀。
優しいお父さんの心に潜む戦争で生き残ったことや
捨てて来た過去への後ろめたさ。
昭和30年の朝鮮戦争特需の神武景気の最中、
戦争は嫌だと身にしみているのに、
今はよその国の戦争のおかげでなんとか生きている現実。
そしてそれに乗る人と乗れない人との間に開いてゆく格差。

それらは皆、表面上は汚れたものを運んで流れているけれど、
水底には取り残されたものが分厚く暗く沈殿している〜泥の河〜
なんという、切ないお話〜〜

主人公夫婦や、加賀まり子演じる未亡人や
その他、出てくる大人たちがほぼ皆、
子供たちに優しさいのだけは救いだと思う。
子供は分け隔てなくこの世の宝だもの〜〜。

出番は僅かながら、
画面が白黒であることを忘れさせるほどの
美しく色っぽい加賀まりこさんと
心の奥深くに悲しみを抱えた田村高廣さんの
さすがの演技に唸らされる。

星のナターシャ