トラック野郎 爆走一番星

劇場公開日:

解説

“トラック野郎”シリーズ第2作目。スピードに命を張り、恋に身を焦がす長距離トラック運転手の哀歓を描いた喜劇。脚本は「トラック野郎 御意見無用」の澤井信一郎、監督は脚本も執筆している同作の鈴木則文、撮影は「帰って来た女必殺拳」の飯村雅彦がそれぞれ担当。

1975年製作/96分/日本
配給:東映
劇場公開日:1975年12月27日

ストーリー

派手なデコレーションで飾った11トン車と4トン車を運転する“一番星の桃次郎”と“やもめのジョナサン”こと金造は、今日もペアーを組んで、日本列島を西へ、東へ、北へ、南へ、と突っ走っている。金造と波の女房・君江は、桃次郎に身を固めさせようとしていたが、桃次郎は、姫路近郊のドライブ・イン「おふくろ」でウェイトレスをしている高見沢瑛子に一目惚れした。瑛子は女子大生で「おふくろ」に下宿し、アルバイトをしているのだった。桃次郎は、自分の見合写真を瑛子に渡すように頼むが、金造は勘違いしてパキュームカーの女運転手・杉本千秋に渡してしまった。瑛子との結婚話が進んでいると思っている桃次郎は、太宰治の愛読者である瑛子に近づこうと必死に文学書を読み始めた。一方、千秋は桃次郎に気持が傾き始め、千秋に心を寄せている交通係巡査・赤塚は内心穏やかではない。金造は子供を生むのに忙がしく、まだ新婚旅行に連れて行っていない君江へのサービスで、9人の子供たちを引き連れて、長崎見物に行くことになった。桃次郎も子供の世話を買って出て同行した。一行は長崎で小学生の薫と雄一の姉弟と知り合った。母が死に、出稼ぎ中の父の帰りを待つ健気な姉弟に桃次郎と金造は心を打たれるのだった。桃次郎の瑛子への思慕が一向に冷めそうもないので、金造はついに千秋に事の経過を話した。千秋は「心配せんといて、男なんか邪魔だから…!」と微笑しながらも、心の中で泣いた。そんなある日、元花巻の鬼台貫・金造を仇と狙うダンプの運転手ボルサリーノ2が、復讐を仕掛けてきた。桃次郎は金造をかばい、挑戦を受けて立ち、激烈なカーレースを展開させた。数日後、金造からプロポーズの手ほどきを受けた桃次郎は、瑛子に求婚した。だが、瑛子には恋人がいた。彼女は恋人・片岡光二と別れる寸前であったが、運転手たちの交流の中で、人間を愛する意味を教えられ、光二との結婚の決意を固めたところだった。桃次郎の恋ははかなくも破れ去った……。暮も押し迫ったある日、桃次郎の車に“当り屋”が飛び込んだ。その中年男は、薫の父親・松吉だった。「親父よ、除夜の鐘を子供と一緒に聞くんだぜ」桃次郎は、松吉をトラックに引きずり上げると長崎へ向けてスタートさせた。一方、薫と雄一の家を訪れていた金造は、土産と正月の晴れ着を買い、二人を励ましていた。長崎へ急ぐ桃次郎は、白バイとパトカーに追跡されたが、丁度通りかかったボルサリーノ2が激しく蛇行して、パトカーの進路をさえぎってくれた。除夜の鐘が鳴りはじめた頃、一番星は粉雪の舞う長崎に到着した。父子の涙の再会を横目で見た桃次郎と金造は「このいい気分、女なんかに分かんねえぜ……」と、固く手を握りしめた。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

5.0下ネタも純愛も友情も太宰も社会風刺も全部載せ、ギラついた東映イズムが産み落とした地上波放映不可の大傑作シリーズ第2弾

2022年12月4日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

今日も今日とて日本全国津々浦々を激走する一番星号とジョナサン号。結婚願望に目覚めた桃次郎は写真館で撮影したキメキメのお見合い写真をバラ撒いて結婚相手を見つけようとしていた。そんな矢先トイレが我慢できなくて飛び込んだ姫路のドライブイン“おふくろ”でバイトをしている女子大生瑛子に一目惚れ。彼女にお見合い写真を渡すよう桃次郎に頼まれたジョナサンはバキュームカー雲龍丸のドライバー千秋に間違って渡してしまって・・・。

新潟の山中を走る女子高生を乗せたバスの女性教師を揶揄う桃次郎とジョナサン。当時『愚図』が大ヒットしたばかりの研ナオコをここで起用、ここで桃さんたちが披露する歌が細川たかしのデビュー曲『心のこり』。雲龍丸の助手を務めるのが前年に『ぎんざNOW!』のしろうとコメディアン道場で5週勝ち抜きの初代チャンピオンになったばかりのラビット関根。そしてヒロインは1973年の『みずいろの手紙』を大ヒットさせたあべ静江と当時の流行をごっそり取り入れている貪欲さが圧巻。だいたい『一番星ブルース』も阿木燿子作詞・宇崎竜童作曲。この年の大ヒットナンバー『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』の作家コンビ。正直ここまであからさまにミーハーな映画もなかなかない、というかそれだけ東映がエゲツなかったということでもあります。何気に挿入歌のダウンタウン・ブギウギ・バンドの『トラックドライビングブギ』も最高にカッコいいです。

そしてもっと圧巻なのはもう地上波では放映出来ないレベルの下ネタの応酬。桃さんがモジモジしながら雲龍丸のバルブをうっかり全開にするカットとか今でも全然爆笑です。当時小2だった自分には全然意味が解らなかったネタがてんこ盛りで、今見るとよくもまあこんなものを子供に見せてたなというカットの数々に滲む昭和の能天気に唖然とします。でも当時の我々は意味なんか解らなくてもよかったんですよ。町中に溢れているいかがわしいモノや言葉がよく解らないのは自分達が子供だからだと弁えてましたからね。今見るとセット撮影も豪華でテクニカルで桃さんとジョナサンが連れ便するカット、桃さんにプロポーズされたと勘違いして布団の中でうっとりする千秋と、桃さんと千秋が深い関係になってしまったと勘違いして落胆して号泣する警官の赤塚を俯瞰するカットの斬新さにビックリさせられます。夏八木勲、田中邦衛、山城新伍、由利徹、園佳也子といった銀幕が似合うスター達の競演は眩しいにも程があり、もう懐かしさで何度も何度も泣けてしまいます。この歳になって観ると加茂さくらも全然キュートで可愛いですし、歳を取ってみないと解らない風景もあるんだなと思い知らされました。

で、そんなデタラメなギャグパートの中にちょいちょい辛辣な社会風刺が投げ込まれるのがトラック野郎の真骨頂。本作の裏テーマはズバリ貧困、警察の取り締まりや経営者のクビ切りで最も簡単に路頭に迷うことになる非正規雇用者と自営業者の慟哭が滲んでいます。特にジョナサンを執拗に追う謎のダンプドライバー、ボルサリーノ2のセリフ、“市民なんてどこにいんだよ!?金持ちと貧乏人しかいねえじゃねえか!“は楔のように胸に突き刺さり、この国がここから半世紀何にも進歩していないことに愕然とさせられます。

こんな感じで出合頭で鳩尾に拳をぶち込まれたような衝撃の後に待っているのはスカッと爽やかなクライマックス。これは絶対『トランザム7000』と『トランザム7000VS激突パトカー軍団』と『コンボイ』は平然とパクってるよね?と改めて思いました。96分という尺にこれでもかとネタを詰め込んだカロリーオーバーの娯楽作品。当時のお正月映画ですから一番星号のナンバーが“1976“であるところにも注目、要するに当時の対抗馬が『ジョーズ』だったんですね。

監督、助監督、脚本の鈴木則文/澤井信一郎コンビ、菅原文太、愛川欽也、田中邦衛、夏八木勲、山城新伍、由利徹、園佳也子・・・こんな大傑作を残してくれたレジェンドがもうこの世にいないことを思うと胸が張り裂けそうで、とりわけお亡くなりになる半年前に中目黒で「そこのお二人、映画を観ていかない?」と突然声をかけてくれて自身の監督主演作『沓掛時次郎』を観せてくれたキンキンの笑顔を思い出して正直冒頭の『心のこり』から最後までほぼずっと泣いてました。こんな素晴らしい作品を今の時代にスクリーンで観れたことに感謝しかないです。

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よね

2.5若き日のラビット関根

2019年11月17日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

怪しいオカマラビット関根の怪演。

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さすまー

3.0ソクブン

2016年5月27日
iPhoneアプリから投稿

本当に下品で素晴らしい。トルコ、ウンコ、バキューム、ラビット関根、鶴光。でも一番下品なのはキンキン。おもしろいなぁ太宰はおもしろいなぁ編。ボルサリーノ田中邦衛。

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pigeyes

3.5日本も

2016年3月17日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

幸せ

萌える

良い時代があったんだなあ〜・・・

観だしたら面白くて、ついつい最後まで見てしまう❗

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