劇場公開日 1961年10月29日

「悪役・小沢栄太郎」妻は告白する よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

2.0悪役・小沢栄太郎

2015年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

この時代の作品を観るようになって気づくこと。
脇役に素晴らしい個性派がいるということ。しかもその人たちの多くが脇専門。
若尾文子に殺される夫を演じる小沢栄太郎もその一人。この人本当に嫌なオヤジの役がはまっている。
でも私生活ではきっといいお父さんなんだろうな。と勝手に想像していたのだが、なんと山岡久乃と浮名を流し、奥さんは自殺してしまったとか。
ニッポンのおっかさん・山岡久乃をして道ならぬ恋に誘い込むなど並のスケベ男のできることではない。畏怖の念すら覚えるこの俳優は映画史に残る作品を何本も支えている。
溝口健二「雨月物語」主人公・森雅之の妹婿で、武士に取り立てられて出世をするが、最後には身持ちを崩してしまう。溝口作品は他に「近松物語」にも出ている。
小津安二郎では「長屋紳士録」
川島雄三では「特急にっぽん」
成瀬巳喜男では「女が階段を上がるとき」
と名匠との仕事は枚挙にいとまがない。

増村保造の本作でも本当に嫌な夫を、男でも憎悪するほどに(そりゃ若尾ちゃんを不幸にする奴だから当たり前だけど)憎ったらしく演じている。
ザイル切られて当然。むしろそのことで不幸のどん底に落ちていく若尾に同情するのはごく自然な心情なのである。解釈の余地もないほどの嫌な奴を演じられる稀有なる悪役である。

佐分 利信