月はどっちに出ている

劇場公開日:

解説

在日コリアンのタクシー運転手とフィリピーナの恋を軸に、在日外国人をはじめ東京に暮らす様々な人々のたくましい日常をシリアス、かつコミカルに描くドラマ。梁石日の『タクシー狂操曲』を原作に、「Aサインデイズ」の崔洋一が監督。本作に先立ち、WOWOWで放映された同名の短編連作が土台となっている。脚本は鄭義信と崔の共同。撮影は「お墓と離婚」の藤沢順一が担当。主演の忠男役にはWOWOW版の石橋凌に代わって劇団SETの岸谷五朗が扮している。キネマ旬報ベストテン第一位。スーパー16ミリ。

1993年製作/109分/日本
配給:シネカノン
劇場公開日:1993年11月6日

ストーリー

在日コリアンである姜忠男カン・ユンナムの勤める金田タクシーは、仕事を離れれば同級生である世一が二代目社長としてきりもりしていたが、従業員は元自衛隊員の新人・安保、忠男にまとわりつくパンチドランカーのホソ、ヤンキーあがりのおさむ、強欲な谷爺、出稼ぎイラン人ハッサンなど、きちんとした会社勤めには不向きな連中ばかり。忠男もまた北だ南だ、統一だとかまびすしい周囲には目もくれず、もっぱら女の子を口説くことに忙しかった。ある日、彼は母・英順の経営するフィリンピン・パブで働くことになった、妙な大阪弁を喋る新顔コニーに出会う。忠男はあの手この手でコニーを口説くが、たくましい彼女には通用しない。だが半ば強引にコニーを抱いた忠男は、ちゃっかり彼女の部屋に引っ越しまでしてしまった。そんな二人の周辺も、また日々変化していく。世一はゴルフ場投資で騙される。洗車係のハッサンは勝手に車を動かし、逮捕されてしまう。目に余り言動のおかしくなったホソも行方をくらまし、故郷の新潟で保護される。さらには英順とコニーが大喧嘩をやらかす。忠男もまた、訳知り顔の若い日本人サラリーマンの客が無賃乗車で逃げ出し、必死で追いかける羽目にあう。職場も恋愛も末期的症状になってきた。煮え切らない忠男に見切りを付けたコニーは、寂しげに見送る忠男を残し、新しい店に移っていく。世一の会社には、明らかにヤクザと分かる金融業者・紺野が現れ、以後ヤクザが監視の目を光らせるようになる。思いあまった世一は会社に火をつけるが、そのとたんに火を消せとわめき散らす。そのあまりのバカバカしさに大笑いしてはしゃぎまくる忠男。月日がたち、忠男はコニーの働く店へ車を走らせ、『あの女は悪い病気を持っているぞ』と匿名電話をかける。そのまま待ち構えていると、案の定、追い出されたコニーが彼の前に現れる。コニーは呆れながらも、澄ました表情で彼女を迎える忠男の車に乗り、二人は東京へ戻っていく--。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第17回 日本アカデミー賞(1994年)

ノミネート

作品賞  
監督賞 崔洋一
脚本賞 鄭義信 崔洋一
主演女優賞 ルビー・モレノ
新人俳優賞 岸谷五朗
新人俳優賞 萩原聖人
話題賞 作品部門/俳優部門 萩原聖人
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映画レビュー

3.5【在日朝鮮人のタクシードライバーとフィリピンパブで働く女性との関係性を濃いサブキャラのタクシー運転手たちの姿と共に描いた悲喜劇。】

2023年4月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■元同級生が切り盛りする金田タクシーで働く在日コリアン・忠男(岸谷五朗)。
 共に働く従業員もパンチドランカー・ホソに出稼ぎイラン人・ハッサンなど、風変わりな連中ばかりだった。
 ある日彼は、母の経営するフィリピンパブのホステス送迎で新顔のコニー(ルビー・モレノ)に出会う。

◆感想

・今作の原作を書いた梁石日のエッセー「タクシー・ドライバー日誌」を学生時代に読んで、”過酷な仕事だな・・、”と思ったモノである。
  だが、今作はそこにそこはかとないエレジーと可笑しみを融合させている点が、印象的である。

・役者陣も、当然ながら無茶苦茶若い。
ー 岸谷五朗、遠藤憲一、麿赤児、國村隼・・。現代の邦画を代表する方ばかりである。亡き内藤陳さんまで出演している。-

<だが、矢張りこの作品の魅力は、フィリピンパブのホステスのコニーを演じたルビー・モレノさんであろう。
 あの独特な関西弁は暫く、耳に残りそうである。>

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NOBU

3.5ショウガの姜

2023年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 初めてテレビで観たときにはルビー・モレノのヌードばかりが印象に残ったが、元自衛隊員の新人運転手・安保(金田明夫)がしつこく自分の居場所を問い合わせる姿を見て、タクシー運転手になってもいいかな~などと思った末が今の俺かもしれない。今回3回目の視聴。

 評論家によっては非日本人から見た日本人・・・云々といったものがあったが、それよりはタクシー運転手の日常や、世間から見下された職業といった印象が強い。キネ旬では評価が高いというのも在日コリアンを扱っているからだろうか。『GO』しかり、『パッチギ』しかり。今となると、「日本は単一民族国家」とのたまった大臣のことさえ思い出してしまう。

 基本のストーリーは、母親の朝鮮の南北統一には興味もなく、女を口説くのが生きがいであるかのような忠男が大阪弁を流暢に喋るコニー(モレノ)にアタックし、うまく結ばれたものの、今度は母親が「結婚するのは朝鮮人じゃなきゃだめだ」と諭し、別れさせられる。そして、社長がゴルフ場建設の美味い儲け話に乗ったばかりに騙され、借金まみれになるといった感じ。

 しかし、その基本ストーリーよりも、パンチドランカーの運転手ホソ(有薗芳記)の「朝鮮人は嫌いだけど忠さんは好きだな。一瞬、金貸してくれよ」が口癖。ヤンキーあがりのおさむ(芹沢正和)が客を殴った事件。イラン人のハッサンが整備士であるのに勝手にタクシーを運転して逮捕された事件(回送にしていればOKのはず)。妻に逃げられた運転手(國村隼)が赤ん坊を背負ってる姿。さらに、忠男が親しげに喋ってくるサラリーマン(萩原聖人)が乗り逃げしようとした事件・・・これらサイドストーリーのほうが絶対に面白い!タクシー運転手というのは前歴が様々。それに性格も個性的で面白いものだ。

 梁石日の実体験からきているフィクションなのだが、原作を読みたくなってきた(タクシー・ドライバー)として。今ではこんな状況のタクシー会社はないと思うけど、昔の話を聞かされると面白いのはいっぱいあるぞ!

 ちなみにラストでは会社は倒産したと思われ、新たなタクシー会社に入った忠男が長野までコニーを迎えに行く。エンディングテーマ曲は憂歌団♪

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kossy

3.0いい感じの「時代劇」でした

2022年12月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

キュートなルビー・モレノ、好演でした。取り留めないストーリーでしたが、雰囲気はありました。

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tuna

3.0ルビーモレノの関西弁の効果絶大。

2021年2月2日
iPhoneアプリから投稿

1993年当時に我が国の多国籍感猥雑感を察知し端正且つ何処か緩慢な群像劇に整理した手腕を再度評す。
バラバラの個々への視線に崔洋一の優しさが滲む。
ルビーモレノの関西弁の効果絶大。
岸谷五朗 の鮮度、萩原聖人の俗物感。
キネ旬90年代邦画ワンか。

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きねまっきい
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