太平洋の鷲

劇場公開日:

解説

連合艦隊司令長官山本五十六の悲劇を中心に太平洋戦争を描く戦記映画で、本木莊二郎の製作である。「加賀騒動」の橋本忍の脚本を、「続思春期」の本多猪四郎が監督している。撮影、音楽は「金さん捕物帖 謎の人形師」の山田一夫、古関裕而。なお「アナタハン」の円谷英二を中心に東宝特殊技術部が全面的に協力している。出演者は、「続丹下左膳」の大河内傳次郎、「幸福さん」の小林桂樹、伊豆肇、「ひまわり娘」の三船敏郎、「白魚」の二本柳寛等。

1953年製作/119分/日本
原題:The Eagle of the Pacific
配給:東宝
劇場公開日:1953年10月21日

ストーリー

昭和十三年、横須賀飛行場で新鋭戦闘機テストを査閲中の海軍次官航空本部長山本五十六は海軍大臣米内光政に突然呼び戻された。日独伊三国同盟に反対している彼の刺客に狙われる危険を慮ってのことである。その甲斐もなく米内内閣は倒れ、第二次近衛内閣は三国同盟を締結し日中戦争終結一本槍で進む事になった。やがて東条内閣の出現で日本は急速に戦争へと押流され、連合艦隊司令長官山本は最後迄交渉妥結を願いながらも真珠湾攻撃の火蓋を切った。緒戦の戦果に有頂点になった首脳部は山本の講和説に耳を傾けず、徒らに戦線拡大を計った。もはや速戦速決あるのみと信じた彼はここにミッドウェーで敵機動部隊と対決する。しかし日本側作戦計画は事前にアメリカ側に入手され、空母赤城、加賀等は次々に凄絶な最後をとげた。唯一隻残った飛龍から飛立った、友永大尉指揮する日本機動部隊最後の十五機の雷撃は、米空母ヨークタウンを撃沈した。が、その飛龍も米第二次大編隊の攻撃に忽ち黒煙に包まれた。以後戦争の主導権はアメリカに移り、ラバウルに移った司令部の機数一覧表からは未帰還機が次々と消されていった。補給のないままラバウル作戦は終結し、トラック島引揚げを前に九二式重爆に搭乗、最後の前線視察を行う長官の顔は憂色そのものだった。前方にプーゲンビルの飛行場が見え護衛の零戦が離れたその時、予め待伏せていたP38が一斉射撃を開始し、発動機に爆発を起した重爆は、瞬時にして撃墜された。時に昭和十八年四月十八日午前七時四十分。

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映画レビュー

5.0ローランド・エメリッヒ監督版のミッドウェーの日本公開前に是非ご覧下さい! 本作はミッドウェー海戦を描いた映画のマスターピースだと思います

2020年9月5日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

これは名作です!度肝を抜かれました!
戦争映画ファン、特撮ファンであるにもかかわらず、今まで観ていなかった不明を恥じます
もっともっと早くに観ていなければならない作品でした

1953年10月公開
戦後初の太平洋戦争を題材とした戦争映画です
占領から独立を回復してまだ1年半という段階です
占領下ではGHQの指導により、このような題材の映画は撮る事は不可能でした
独立を回復したからといって、いきなり撮れるかというとやはり怖いものがあったはずです
しかし、戦後まだ8年
戦争に行った人々がいてその記憶は生々しいものがあったはずです
戦死した父や兄を持つ家族は沢山いたはずです
本作の予告編でも、あなたの自身、あなたの父や兄が如何に戦ったかと謳っています
どう戦い死んで行ったのか?
どう生き残ったのか?
知りたいはずです
戦後になって少しずつ、太平洋戦争の実際はどのような推移であったのかが明るみになりました
大本営発表の公式フェイクニュースしか知らされていなかった国民も、戦後のこの頃にはもう本当はどうであったのかは、ほとんど知っていたと思います
しかしそれを映像として観る、追体験するということは絶対に必要なことであったのだと思います

太平洋の鷲とは、山本五十六のことを指しています
1938年の海軍次官兼航空本部長時代から、1943年4月の戦死までを扱っています

冒頭、いきなり逮捕された極右テロリストが暗殺目標として山本五十六の名前を挙げるシーンから始まります
このように、日独伊三国同盟締結は対米戦争に発展して日本の破滅を招くと抵抗している人物であること、そして続くシーンで航空主兵論者であることも手際良く説明します

真珠湾攻撃、ミッドウェー作戦、ソロモン海海戦、そして自身の戦死について展開します
しかし、戦いの過程をしっかりと描写するのはミッドウェー作戦と、自身の戦死についてのみで、他の戦いはほとんどダイジェストです
あくまで太平洋の鷲、山本五十六がどの様に戦争を防ごうとし、防げないならどう戦おうとしたのかの姿がメインとなっています

ミッドウェー作戦は中盤でたっぷりと時間を使って描かれます
もの凄い迫力です
記録映像と特撮をうまくミックスしてあります
円谷英二が戦時中に撮った戦意高揚映画3本からの流用も多数あります
その流用映像での陸軍の戦闘機である隼をゼロ戦に見立てたカットもあり厳密にはおかしい所もあるのですが、実際の映像の迫力は物凄いものがあります
そして構図が、空母の乗組員や、戦闘機、雷撃機の搭乗員の視点にこだわっており大変な臨場感があります
実物を模した飛行甲板に実物大の艦載機が並んでいるシーンはトラトラトラにも負けません

戦闘の推移も良く整理され、安閑と時間を浪費して敵襲を受けてしまうサスペンスを時計を使って盛り上げているなど、結果を知っているだけにドキドキ感、焦燥感が凄まじく、その的確な演出が見事に冴えています

被爆して大混乱に陥る空母の状況なども、単に大爆発で終わらせておらず、細かい演出が光ります

航空機がエレベーターに乗って格納庫から飛行甲板に押し上げられるカットは、後のウルトラセブンでのウルトラホーク1号の発進シーンを思わせます

空母自体の巨大さ、重量感も大変に良くでています
その上空を縦横に飛び回る敵機、空いっぱいに広がる対空砲火の爆煙
どこまでが記録映像でどこからが特撮なのか分からないようなカットも沢山あります
1976年の米国映画ミッドウェーよりも、迫力があります
日本の他の戦争映画の同種のシーンよりも上だと感じました
それ程の高いレベルです

そして大河内傳次郎!
彼の山本五十六の実在感は素晴らしいです
本当に山本五十六です!
三船敏郎の山本五十六よりも山本五十六です
感動しました

ですから、戦争映画ファン、特撮ファンは絶対にご覧になって頂きたいと思います
そしてもう直ぐローランド・エメリッヒ監督版のミッドウェーの日本の公開です

是非それを見る前に予習として本作のをご覧頂きたいと思います
本作は戦争映画、ミッドウェー海戦を描いた映画のマスターピースだと思います

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あき240

2.5戦後初の本格戦争映画であり、日本初のファイヤースタント映画

2017年11月25日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

単純

知的

戦後初となる本格戦争映画。
戦時中に製作された戦意高揚映画とは違い、日本は何故戦争という愚行に踏み切ったか、今一度振り返る。
登場する実名者の中には当時戦犯にかけられていた生存者もおり、その戦争責任も問い、軍や政治的な立場だけではなく市井の人々も描き、意欲を感じる。
三国同盟締結、真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦、敗戦へ…を山本五十六の悲劇を中心に描くドキュメンタリータッチ。
戦局が大きく変化した出来事がいずれも描かれているが、どれも並べ立てられたエピソードに過ぎず、展開や盛り上がりは単調で平凡。ドラマとしては退屈で面白味に欠けた。

監督&特撮は本多猪四郎&円谷英二で、この翌年に『ゴジラ』を世に放つ。
実録映像挿入しながらの円谷特撮は見応えあり。
日本初のファイヤースタント映画でもあり、担当したのは中島春雄。その奮闘が円谷英二の目に留まり、ゴジラに。

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近大
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