車夫遊侠伝 喧嘩辰

劇場公開日:

解説

紙屋五平の原作を「残月大川流し」の加藤泰と鈴木則文が共同で脚色、「風の武士」の加藤泰が監督した仁侠もの。撮影は「人斬り笠」の川崎新太郎。

1964年製作/99分/日本
配給:東映
劇場公開日:1964年4月5日

ストーリー

明治も末期の頃。車屋の辰五郎は東京で事件を起し、新盛り場大阪へと流れて来た。大阪駅前は西村組が取り仕切る縄張りだが、一匹狼の辰五郎はその縄張りを歯牙にもかけず、持前の気ッ風とゴム輪の人力車で人気を呼び、車辰として異名をたかめていた。そんな折も折、西村組の親分弥三郎が思いをかける芸妓喜美奴が辰五郎の車にのった。お互い鼻ッ柱の強い二人のこと、一寸した言葉の行き違いから辰五郎は、喜美奴を川の中へ放りこんでしまった。赤い蹴出し散らつかせながら落ちて行く喜美奴を見た瞬間、辰五郎は彼女に惚れこんでしまった。日頃の恨みもあって、西村組は辰五郎を弥三郎の前に連れていった。このオトシマエはと詰寄る西村組の前で、辰五郎は喜美奴に惚れた事を話し、自分の身柄は西村組でどう処分しても構わないと度胸をみせるのだった。弥三郎はそんな辰五郎に一目惚れ、二人の仲人をかって出た。しかし、弥三郎が喜美奴に惚れていると知った辰五郎は、彼女との結婚を断ってしまった。辰五郎の心意気を知った弥三郎は、喜美奴の妹分、玉竜を囲うと言いだし、二人の結婚を迫った。だが、辰五郎の弟分を任ずる銀二郎と玉竜はできた仲だ。何も知らない辰五郎と喜美奴は結婚する事になった。その最中弥三郎は警察にあげられた。弥三郎の義兄半田弥太郎との柔術試合に敗れた矢島に禁制のダイナマイト漁を密告されたのだ。矢島は弥三郎の留守を狙って縄張を拡げていった。辰五郎は弥三郎の女房おとくを盛り立てて、必死の防戦を続けた。そんな頃に弥三郎が出所して来た。それを知った矢島は、弥三郎の暗殺を計った。だが、襲撃は矢敗に終わり、弥三郎の身代りとなって銀二郎が死んだ。泣き濡れる玉竜と喜美奴の姿を背に、辰五郎は矢島との決闘の場へ出かけて行くのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.0溢れ出る身体的享楽

2023年6月19日
iPhoneアプリから投稿

『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』や『博徒七人』あたりのカルト邦画が好きなら絶対にハマる一本。

感情以外の行動規範を持たない喧嘩辰のあまりの破天荒ぶりに終始度肝を抜かれる。お客は荷物に過ぎないといって人力車ごと女を川に放り投げたかと思えば次のカットではその女に求婚。しかし彼女がヤクザの親分の妾候補であったことを知って婚約破棄。その後も間断なく発揮される辰のあまりの直情的な暴漢ぶりに思わず笑ってしまう。

それでいて彼の狂気を制止するようなマトモな登場人物が一人もいない。ツッコミ不在のまま映画は加速度的に混沌の様相を呈していく。ラストの橋の上での結納式は明らかに異常であるにもかかわらずそこまで異常さを感じない。これは映画内の狂気が画面を超越して我々までをも汚染していたからに他ならない。収監されゆく夫を見送る新妻の神妙な表情に我々は驚嘆とも落胆ともつかない自分自身のカオスな心情を重ね合わせる。

加藤泰の巧みな撮影・演出技法もまた本作のカルトさをさらに倍加している。上下左右のみならず手前と奥を強く意識した立体的な撮影技法は襖で仕切られた日本家屋の構造とすこぶる相性がいい。運動主体と背景が絶えず入れ替わる視覚的ダイナミズムが身体性優位の物語のトーンと重なり合うことで、全体を通じてきわめて動きのある作品に仕上がっている。またチープになりがちなセット撮影の段でも、空間全体に霧をかけることで深遠な奥行きを演出している。長回しは多いもののそれ一辺倒ではなく、適度にクローズショットが挟まれているので停滞した感じはない。

任侠映画の括りでみれば評価の下しにくい作品だが、身体的享楽をとことんまで突き詰めた映画としては出色の出来だ。これある種のヌーヴェルヴァーグなんじゃないかと思う。

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因果

3.0任侠、破天荒、男と女の愛を乗せて

2020年12月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

興奮

加藤泰監督1964年の作品。

時は明治。
東京から大阪にやって来た車引きの辰。
俺の車は超特急。乗ったら最後。どんな人間様だってお荷物。
義理人情に厚いが、気性は荒く、喧嘩っ早い。
早速、同業者と揉め事。
その日も客と。勝ち気な芸者・喜美奴と口論。
彼女はやくざ親分の妾であったから、さあ大変!
しかし辰は、思いもよらぬ事を口にする。
この女に惚れちまった!結婚させてくれ!

普通だったらただでは済まされない。コンクリ詰めにされ、冷たい海の中へ…。
しかし、世の中全てに喧嘩売ってるような一本調子で威勢のいい辰に、親分も気に入る。
喜美奴もいつしか…。
親分も二人の結婚を承諾し、辰は伴侶を乗せてーーー。
ところが、まだまだ破天荒な辰の物語と、男と女の激愛。

ちょっとした思い違いなどで、くっ付いては離れ、くっ付いては離れを繰り返し…。ある夫婦の物語。
辰の弟分の車引き。その恋人。若いカップルの恋物語も。
任侠映画の醍醐味。
ある道場破りが勢力を伸ばし、彼らを脅かしていく。
悲劇が起こり、ラストは一対一。

漢な内田良平、美しい桜町弘子。両者の演技が光る。
演者は皆生き生きしていながら、明治という文明開化の荒波に呑まれていく。
娯楽のツボを抑えた加藤監督のさすがの職人手腕。
そしてどの作品でも、唸らされる構図がある。
本作は、ラストシーン。雪降る橋の上で、辰と喜美奴が二人だけの祝言を挙げる。
悲しくも、美しい。

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近大

5.0任侠映画の傑作

2016年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

興奮

東京から大阪に破天荒な車夫(内田良平)がやってくる。
最初に乗せた芸妓(桜町弘子)と喧嘩、人力車ごと川に落としてしまう。
この芸妓は一帯を取り仕切る親分(曽我廼家明蝶)のお妾になる予定だったが、車夫は一目惚れ、結婚を申し込み、芸妓も承諾してしまう。
親分は二人の気風を買い、直ちに祝言を上げることに・・・。
とても面白い任侠映画で、登場人物一人ひとりが生き生きとしている。
中でも桜町弘子がとてもよい。

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