ごろつき(1968)

劇場公開日:

解説

「裏切りの暗黒街」の石松愛弘がシナリオを執筆し、「侠客列伝」のマキノ雅弘が監督したアクションもの。撮影は「喜劇 競馬必勝法 一発勝負」の飯村雅彦が担当した。

1968年製作/92分/日本
配給:東映
劇場公開日:1968年10月12日

ストーリー

押し寄せる不況の波には勝てず大場勇の勤める北九州の炭鉱は廃鉱になった。母と弟妹四人を抱える勇は、ボクサーで活路をひらこうと友人一郎を誘って故郷を離れた。上京した勇は、早速沢田ボクシング・ジムを訪れ、練習生の村井を倒し、見事に入団を決めた。ところが花形選手を持たぬジムは、見すぼらしく、会長の沢田は、タイから伝わったキック・ボクシングに命を賭けていた。一方一郎は、大金持ちの未亡人に犬係として雇われ、あてがわれた粗末な小屋で勇との共同生活が始まった。二人は生活費をきりつめ、故郷へ仕送りを続けていたが、犬の食事を盗み食いしていることが発覚し、解雇されてしまった。そんな彼を励ますのは、沢田会長の妹友子だった。友子を送った勇は、その帰途愚連隊にからまれていた流しの三吉と長吉を助けた。これがきっかけとなって勇と一郎は、大空楽団のメンバーとなり、盛り場を流して歩いた。歌の修業とボクシングの猛練習に明け暮れる勇に、チャンスが訪れた。沢田の口ききで、日本チャンピオンの練習台になった勇は、猛烈なパンチを浴びせてKOしてしまった。それからは連戦連勝、やがてノンタイトル戦が、決定するまでになった。そんな折り、大空楽団を仕切る浅川が、暴力団の唐沢親分に脅迫された。浅川はかつて関東桜田一家の親分だったが、テキ屋の時代は去ったと考え、由緒ある看板を下して久しかった。唐沢はその看板が欲しかったのだ。ある日勇は、唐沢の運転する乗用車が、新聞配達の少年をはねて重傷を負わせながら平然と逃げ去ったのを目撃した。これに怒った勇は、唐沢商事で暴力をふるってしまった。唐沢は浅川に慰謝料か、看板譲渡かの二者択一を迫った。浅川は大空楽団の家と土地を売ることにした。やがて少年の容体は悪化し、徹夜の看病をした勇は、疲れた身体でリングに上った。そして、苦闘の末チャンピオンを倒したが、勇を待っていたのは既に冷たくなった少年だった。悲嘆に暮れる勇にさらに悲報が伝わった。楽団の家が唐沢に焼かれ、浅川が殺され、唐沢を襲った一郎も逆に刺殺されたというものだった。子分に自首させて平然とする唐沢に、男は復讐の炎を燃えあがらせた。もはや友子の涙も、沢田の諌めも、勇の心には届かなかった。やがて、唐沢の前に姿を現わした勇は、唐沢を刺し倒して、恩人や親友の怨念を晴らしたのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

4.5高倉健 復讐ものの快作

2022年7月7日
iPhoneアプリから投稿

高倉健と菅原文太というあまりにも豪華なスター共演作。

ささやかに積み上げてきた人間関係を悪意や権力によって破壊された高倉健が復讐の鬼と化す、というお決まりの展開ではあるものの、前半のヒューマンドラマがあまりにも人情味溢れる豊かなものであるだけに、後半の復讐譚との落差が際立っている。

遠い故郷の家族、上京初日の窮地を救ってくれたテキ屋の大将、ボクシングジムの厳しくも優しい面々、気さくな新聞配達の少年、そして自分を兄貴のように慕ってくれる菅原文太。ふだんの高倉健ならそういった温情に対しても常に一定の距離感を取ろうとするのだが、本作の彼は純朴で素直だ。彼らの優しさに応えるべく一所懸命に奮闘する。

しかしプロキックボクサーの夢と恩人である大将への恩返しがいよいよ成就しかけたかと思ったそのとき、ヤクザの悪意がふいに高倉健の人生を塞ぎにかかる。新聞配達少年の死に始まり、テキ屋の大将や菅原文太の命も奪われる。

眼前の理不尽に高倉健がいよいよ怒りを爆発させる。ボクサーの夢を諦め、たった一人でヤクザのアジトに突入。彼の和室を跨いだ大立ち回りはいつもながら感嘆してしまう。カンフーめいたドタバタ劇に落ちぶれてしまいそうなくらい現実味のないアクションが連続するのに、その渦中にあっても彼の立ち振る舞いにはなお武士の風格が備わっている。

良くも悪くも他者に対する垣根が低いことによって成立する昭和的人情なるものが、実のところ無慈悲な他者侵犯をも厭わないヤクザ的略奪思想と紙一重であることを見事に描き切った快作だった。

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因果

4.0あんまりごろつきじゃない

2012年5月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 健さんと文太が、炭鉱夫をやめてキックボクサーを目指して上京する。住む場所もなく浮浪者同然の生活に陥りごろつき呼ばわりされるのだが、ただの貧困層というだけでたいへん真面目で誠実な性格なので、大してごろつきじゃないな~と思った。歌もとても上手だった。

 キックボクシングの試合や殴り込みなどアクション、恋も含めて見せ場たっぷりのエンターテイメントだった。

 大阪、新世界東映のオールナイト上映で見たのだが、あらすじを先に全部しゃべってしまうおじさんがいたり、そこらじゅうでタバコを吸っている環境も含めてとてもスリリングだった。

 寝ている人に対する配慮か、音声は若干小さめだった。

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吉泉知彦
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