劇場公開日 1975年9月6日

「怪優大戦争」金環蝕 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

2.0怪優大戦争

2015年10月9日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

興奮

知的

金融業者の宇野重吉。内閣官房長官の仲代達也。新聞記者の鈴木瑞穂。建設業者の西村晃。公社副総裁の神山繁。
どいつもこいつも一筋縄ではいかない悪辣な連中ばかり出てくる。この中にあって、やたらと鼻息の荒い代議士の三國連太郎が可愛らしく見えてくるのは、やはりほかの連中がずる賢い奴ばかりだということ。新聞記者の高橋悦史と三國の一本調子があればこそ、宇野と仲代の腹の底の見えない男たちが引き立つ。
それにしても京マチ子がなかなか出てこない。名刺に刻まれた名前だけ出てくる総理夫人が、後半になって現れても、そのころにはもう観客はワルとエロにおなか一杯である。いまさら京マチ子に何を期待するだろうか。遅すぎだ。
しかし、終盤になって出てくるキャストの中で法務大臣の大滝
秀治と彼に与えられたセリフがこの映画の白眉である。疑獄事件に関して検事総長との間に交わされる会話は、職務上の建前と政治家としての本音を顔色一つ変えずに以心伝心させるという、重大局面を演出している。大滝の虚空を見つめるような眼差しは、寒気すら感じさせる名演である。長い映画にサスペンスを盛り込むことに成功し、このおかげでダレることなく最後まで怪優たちの競演から目が離せない作品になった。

佐分 利信