劇場公開日 1982年10月9日

「分かる人には分かる迷作!」キッドナップ・ブルース 疾走チェイサーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0分かる人には分かる迷作!

2014年4月23日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

難しい

作品のあらすじだけ読むと、ペーパームーンのようなロードムービーかと思ったんですが、違いました。
物語が淡々と進んでいくのです。
森田と舞ちゃんが旅をしていくのですが、その道中で突然出てきては、唐突に語り出す俳優さん。(いや、怪優さん?)その台詞は演技ではなく、アドリブじゃないかなと思うくらい自然体で、ストーリーとは無縁の会話なんです。小難しい話を淡々と語り合うタモリさんと俳優さんたち。まるでトーク番組のようにも見えるんだけど、それもまた違う。わけの分からない内容なんだけど、つまんないわけじゃないし、飽きたりもしない。
ただ、この人たちの会話には誰しもが幼少期に聞いたであろう『大人たちの会話』を連想させる。「正月に来てたおじさん、あんなこと言ってたな〜」と、ふと思い出す感覚だ。
これがこの映画の狙いなのかもしれない。

個性的な演技もそうだが、カット割も独特である。調べると、監督の浅井慎平はカメラマンだったらしい。そのせいか、断片的に情緒ある景色が映し出される。その感じがNHKの一日の放送終了後に流れる映像を彷彿とさせる。

なんというか、『小学生の頃、夏休みに真夜中まで起きてたら、たまたまテレビで見た映画』と説明したら、しっくりくるかな、と。

全編を通していえることは、タモリさんありきの映画だ。タモリさんにしか出せない雰囲気が映画全編から漂っている。また劇中で宴会場でタモリさんが歌うシーンがあるのだが、そのシーンには思わず感嘆した。

ラストシーンが凄かった。「は?ああ」って(笑)タモリさんっぽいな〜。でもわざわざDVDを入手してみるほどでもない。

人生で一度は見て損はない映画。見なくても損はない。面白くないけど、つまらなくもない。でも、いい意味で呼吸するように観れました。
多分、この手の映画は現在の映画会社が製作はしないだろう。
心地よい迷作映画でした。

疾走チェイサー