劇場公開日 1982年10月16日

「第2の「黒部の太陽」にはなれなかった」海峡 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0第2の「黒部の太陽」にはなれなかった

2017年6月1日
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鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

単純

興奮

青函トンネル工事~開通を描いた、東宝創立50年記念の超大作。
超一流のスタッフ・キャストが集い、携わった男たち女たちの壮大な物語。

一大プロジェクトを描いた映画と言うと真っ先に浮かび上がるのが、「黒部の太陽」。
どちらも世紀の工事と呼ぶに相応しいが、黒部ダムは着工から完成まで7年なのに対し、こちらは足掛け約30年!
海の底にトンネルを掘るのだから、とんでもない話である。
ならば映画も「黒部の太陽」を上回るほどの…残念ながら、第2の「黒部の太陽」にはなれなかった。

その最たるは、人間ドラマの魅力に乏しい。
「黒部の太陽」は、工事の過程を克明に重厚に描きつつ、三船敏郎演じる主人公の現場責任者の苦悩・葛藤、石原裕次郎演じる設計屋の息子と辰巳柳太郎演じるトンネル屋の父の対立・愛憎など執念と気迫に満ちた人間ドラマとなっていた。
勿論本作も工事の過程は一通り描かれているが、それを盛り上げるであろう登場人物各々の人間ドラマに引き込まれるようなメリハリが無い。
吉永小百合演じるヒロインのメロドラマ的な要素は明らかに蛇足。これがかなり本作をチープにしてしまっている。
三浦友和演じる喧嘩っ早い青年の成長もステレオタイプ。
森繁久彌演じる現場責任者…いや、“親父”が一人、存在感を放つ。
主演・高倉健も熱演しているが、これと言って目を引くものではなくアンサンブルの一人に留まり、森繁と出番は僅かだが笠智衆ら先輩名優たちに食われてしまっている。

迫力も見応えもあるにはある。
撮影も大変だったであろう。
でも本当に大変だったのは約30年にも及んだ実際の工事。
実際の工事は偉業だが、失礼ながら映画は生温さを感じてしまった。
次いでに言うと、開通したのは本作公開の翌年らしい。掘るの、急ぎ過ぎちゃった?

後、本作はどうしようもないくらい音楽がダサい…。

近大