劇場公開日 1962年1月14日

女の座のレビュー・感想・評価

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4.0大家族と経済問題

2023年2月12日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1962年。成瀬巳喜男監督。ほとんどが女の複雑な大家族。あるじ夫婦以外に、長男亡き後で家と商店を切り盛りする嫁、下宿を経営する長女、ラーメン屋を経営する次男、九州へ嫁に行った次女、自宅住まいでお花とお茶の師匠をする三女、フリーターになってしまった四女、バイトの五女。前妻の子どもか今の妻の子どもか、結婚しているかしていないか、同居しているかしていないか、でばらばらに分かれている大家族のなか、一人血のつながっていない長男の嫁が苦労する、という話。
あるじの怪我、九州から帰ってきた次女、四女と五女の結婚問題、今の妻の生き別れた息子の登場、嫁の一人息子の成績不振、というイベントが次々と起こり、家族がせわしくなく集まる。そして話し合うのはお金のこと。高速道路開通による立ち退き料、親の遺産、ラーメン屋や下宿の回転資金、結婚資金、しばらく会わなかった息子に騙されたふりで払う慰謝料、車購入の前金の口実で渡す愛情の証としての資金。見合い相手が勤める会社の株価。皮算用だったりリアルな現金だったりただの情報だったする金の多寡が人間関係を決めていく。
豪華スター勢ぞろいで悲喜こもごも。家の間取り(気の強い三女が借りている離れ、嫁親子がひっそり暮らす二階など)もすばらしいし、ここぞという場面での電車の迫力、なにげなく聞こえる町の騒音(チンドン屋、救急車、為替相場)もすばらしい。若者からベテランまで俳優人はみなすばらしいが、気高く独りよがりな草笛光子が美しく哀しい。

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