劇場公開日 1991年7月20日

「小5の彼女と大人の彼女の話との繋がりが弱い」おもひでぽろぽろ Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5小5の彼女と大人の彼女の話との繋がりが弱い

2013年12月7日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

楽しい

幸せ

萌える

総合65点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:80点|ビジュアル:75点|音楽:75点 )

 子供時代ってこんなことあるよなとか、どこの小学生も似たり寄ったりなんだとか、観ていてそんな場面が散りばめられている。その演出がさりげなく自然で上手。特に、色が水彩絵の具で描かれた絵のように優しく淡く抜けて夕陽の差し込む帰り道、意識している男の子と声を交わして天に駆け登っていく場面が面映い。
 一方で大人になったタエ子の話と、これらの昔の話の繋がりがわからない。昔を思い出すのはいいが、子供のころの話を一つ一つが全て現代の話に繋がっているわけではない。そのために二つの話を同時進行にしたときには、嫌いな食べ物があったり温泉に行ったり家族ともめたりといった、タエ子の小学生時代のありふれた日常生活をひたすら見せられてもそれがいったいどうしたのかと感じてしまう。過去の話の一部は現代のタエ子にとても重要だけど、小学五年の彼女だけが現代の彼女を形作っているわけでもない。小さな思い出話をいくつも集めていても全体の流れとしての一体感がなくて、その意味で無駄な尺が多すぎて全体が間延びした印象をもってしまう。いくつかの枝を良く見ていても、木全体をうまく眺められていない感じがする。

 頬の豊齢線はタエ子を27歳よりも相当に老けて見せてしまっているのは残念だが、全てがそうではなくても絵は時々細かく書き込まれ美しさを見せてくれる。ハンガリーの農民の歌など音楽も独特でいい。細かい時代設定など凝っているのがわかる。過去と現代の物語の繋がりの弱さ以外にも、全体として物語は地味で抑揚が少なくてそれほど引き込まれるわけではないが、人物の動きや感情といった描写の質はけっこう高い。途中でやや退屈な部分もあるけれど、最後はあっさりながら子供たち総出演で大人の彼女を後押しして綺麗にまとめてくれた終わり方ですっきりした。

コメントする
Cape God