飢える魂

劇場公開日:

解説

若き人妻と未亡人、幸福を求めてさまよう苦難と喜びの遍歴を描く丹羽文雄の原作を「デンスケの宣伝狂」の柳沢類寿と、川島雄三が共同で脚色、「わが町」に次いで川島雄三が監督する。撮影は同じく高村倉太郎。主な出演者は「隣の嫁」の南田洋子、「夏の嵐」の三橋達也、「泣け、日本国民 最後の戦闘機」の大坂志郎、「赤信号」の轟タ起子、「暁の逃亡」の小杉勇、その他清水将夫、高野由美、渡辺美佐子、志摩桂子など。

1956年製作/日本
劇場公開日:1956年10月31日

ストーリー

子宮筋腫で東京のさる病院に入院した味岡道代は、見舞いに来た芝令子と小河内まゆみの生活を、しきりに羨望する。令子は建築界を牛耳る芝直吉の若妻、生活に何不自由ないが自分を金のかからない秘書兼娼婦としか考えぬ五十男の夫に不満。まゆみは夫亡きあと二人の子供を抱え建築ブローカーをやっているが、何かしら魂の飢えを感じている昨今。ある日、大阪の白仁邸でお茶の会に出た令子は、同席の青年紳士立花烈に動悸が高まるのを覚える。しかし立花に気持を打明けられても、彼女は貞淑な妻として冷やかに応待。立花は財閥天童家の分家の跡取り、大変なドン・ファンだが、愛人の女給のり子を袖にする程、令子には真剣である。勝浦の旅館にまで後を追って来る立花に、令子は十年の夫婦生活を越える魂の目覚めを感じ出す。一方、まゆみも病妻持ちの出版社部長下妻と関係あったが、求愛はさけていた。だが子供の昭と伊勢子は二人の仲を誤解して不満。昭は下宿したいと言い出し、借金してでも旅館業を始めて身を固めたいと考えているまゆみを苦しめる。東京に戻った令子は退院した道代を訪れ、悩みを打明ける。道代の夫、仏文学者の礼司は令子の仲人を勤めただけに、その悩みを咄嗟に感じ取った。やがて、まゆみは旅館の件で京都に所用のある下妻と連れ立ち伊勢松坂の兄を訪ねる。この頃、夫と同行、志摩に赴いた令子は、ホテルで遂に自ら進んで立花の腕に抱かれた。兄と話合いのついたまゆみも京都に下妻を訪ね、バーで飲み交す中、日頃分別ある彼に激しく迫られ、とある宿に同泊。飢えも満された令子とまゆみ。だが立花はふとした事故で悲惨な死を遂げ、何も知らぬ令子は夫との最後の旅を北海道へ出発。まゆみも下妻の病妻の死と、それを誤解した伊勢子の自殺未遂で、結婚を諦めねばならなかった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5Unfinished

2023年8月4日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

仕事や付き合いで訪れる様々な観光地で密会する中で不倫関係におちていく二組の男女をそれぞれ交互に描いた作品。
不倫に至るまでの男女の微妙な心理描写も良かったが、女の方の連れ子が自分の母親が亡き父の友人であった男と仲良くなることに対する心理的抵抗の描写が魅力的だった。

話自体は特に面白かったり深かったりすることはなかったけど、所々のシーンや演出で見せてくれる。
例えば、橋を挟んで大原美術館の建物をバックにスリーピースのスーツで立つ三橋達也と、昔ながらの瓦屋根の土蔵造の街並みをバックに着物姿で立つ南田洋子の対比の構図は美しかった。

芝令子演じる南田洋子は伏し目がちで身体を斜に構え、夫に仕える妻らしくしとやかに振舞っているのだが、三橋達也演じる立花烈の愛の告白の後に上目遣いに見つめる時のアップの顔は本当に美しく、これだけでもこの作品を観る価値があったと思った。

他にも、衣装が森英恵で、冒頭の轟夕起子のスタイリングもモダンでオシャレだし、南田洋子の着物の柄が毎回違っていて目につく。三橋達也の和装やスリーボタンのジャケットもカッコイイ。

個人的に凄いと思ったのが、オーケストラのコンサートを聴きに行くシーン。
パンフレットをアップで写したまま、拍手が起こり演奏が始まると、タクシーで帰るシーンに切り替わる。場面が切り替わっても、タクシーのラジオから流れているという体で、音楽はそのままシームレスに流れていて、演奏は第一主題に入る。演出も良いが、シューベルトの『未完成』とタクシーでの会話のやり取りの画との組み合わせが絶妙だった。

シューベルトの『未完成』が使用された映画はたくさんあるだろうけど、私がぱっと思い浮かぶのは『マイノリティリポート』のみ。他に何かあったかしら…。

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抹茶
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