安城家の舞踏会

劇場公開日:

解説

「象を喰つた連中」に次ぐ吉村公三郎監督で、自身の原作を「待ちぼうけの女」「結婚(1947)」の新藤兼人が脚色し、「象を喰つた連中」「処女は真珠の如く」の生方敏夫が撮影を担当する。滝沢修、逢初夢子、原節子らが顔を合せている。

1947年製作/89分/日本
原題:The Last Ball of the Anjohs
配給:松竹
劇場公開日:1947年9月27日

ストーリー

皇族までが漬物屋を始めるという御時世に華族の没落はいうまでもない。華族の中で名門をうたわれた安城家もその例にもれず、今迄通りの生活をするために全てのものを手放し、今や抵当に入れた家屋敷まで手放す時が来た。彼等の言葉を借りていえば「まるで嘘のように無くなり、夢のように消えて行く」のである。その夢のように消えて行く華族安城家の最後を記念するために舞踏会を催したが、その舞踏会の裏には安城家最後の種種なあがきがあった。安城家の当主忠彦は家を抵当にインチキヤミ会社の社長新川から金を借りていたが華族生活から脱けきれないままに、今やギリギリのところまで来たが、やはり家を手放すことが惜しく新川を招いて最後の哀願をするが新川は肯じないだけでなく、自分の娘曜子と安城家の長男正彦との婚約も解消すると言い出した。それを立聞きした正彦は、新川を憎むあまりに、何も知らずに正彦を慕う曜子に残忍な復讐をする。やがて夜が更けて客も帰り安城家は無気味な迄に静まり返った。今日を限りに伯爵安城家の凡てが夢のごとく消えて行くという寂しさは、年老いた忠彦には堪える事が出来ず、彼は自分のノドにピストルを当てるのだった。

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映画レビュー

3.5この作品に限らず古い映画の方が演技が自然に見えるので安心して観られる。

2023年8月11日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

この作品に限らず古い映画の方が演技が自然に見えるので安心して観られる。

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Mr. Planty

3.0そもそも制度自体が…。

2023年4月12日
Androidアプリから投稿

相応の財力があり、社会の有閑層として政治などを担ってきたヨーロッパの王侯貴族とは全く違い、日本の貴族(華族・士族)は、幕藩時代の支配層をそれなりに遇するための、いわば中間的な位置づけの制度。そもそものお話。かつての金融再編時代で言えば「ブリッチバンク(承継銀行)」みたいなものでしょうか。
あまつさえ「四民平等」を打ち出したはずの明治憲法の理念からすれば、そもそもが、例外的な「橋渡し」的な制度だったはずです。
そう考えると、本作の安城家の末路は、当然の結末といえば、当然の結末であったようにも思われます。
そのことに気がついているのか…敦子(原節子)の立ち居振る舞いが、それだけに胸に痛い一本でもありました。評論子には。

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talkie

4.0戦後日本の華族の没落と民主主義への期待を扱った演劇映画

2022年7月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

吉村公三郎監督の佳作。誇り高き華族の滅びゆく姿を切実に描いた家庭劇。それでも民主主義への期待を込めて美しく終わるところに、戦後日本の希望が感じられる。原節子、滝沢修、森雅之の名優は勿論良いのだが、全体の演技のバランスは最良ではない。吉村監督の演劇演出に不満を覚える。貴族描写をヨーロッパ映画と比較すると見劣りがするのは仕方ないのだが。日本映画が最も不得意とする分野の作品。

  1976年 10月15日  銀座並木座

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Gustav

4.0新しい日本を、旧華族と平民が力を合わせて建設していくのだという希望を描いています

2019年10月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

1947年9月公開
その年5月3日は新憲法の施行でした
新憲法は第9条の戦争放棄がまず思い浮かばれますが、第14条で法の下での平等、貴族の廃止が規定されています
ですから本作は華族廃止後わずか4ヶ月の実にタイムリーな時事ネタ映画だったわけです

伯爵邸宅はおそらく鎌倉の海岸べり
その邸宅内でのシーンはまるで洋画で見た世界です
内容もまたルキノ・ヴィスコンティの名作山猫を思わせます
舞踏会シーンがハイライトなのも同じです
しかし本作のほうが21年も先に撮られいます

ライオン奥様劇場で真珠夫人が登場してきそうです、殺人事件が起こって金田一耕助が頭を掻きながら登場しそうです
というか、それら日本の上流階級の邸宅内部のイメージは本作が源流になっているのではないでしょうか

原節子、森雅之と大物俳優が出演します
原節子は伯爵家令嬢役がピッタリはまっています
全力で走ったりダンスをするシーンは他の映画では観たことの無いものです
森雅之も女を騙して食い物にする役を演じると天下一品です
しかしご安心下さい
原節子とは兄妹の設定なので、彼女は無事です、森雅之の毒牙にはかかりません
もっとも結構綺麗な女優さんが演じる女性二人を彼が騙して食い物にして二人から首を絞められたり殴られたりしますのはお約束です

物語は華族も残しても良かったのでは思えるセンチメンタルなトーンで進行しますが、新日本の建設の出発でありこれで良いのだという結論に導かれて終わります
原節子役の姉は戦後羽振りの良くなった元運転手をそのプライドから拒絶しています
元運転手も実質的な革命に少し生意気な態度で登場します
酒を暴飲して放言して邸宅を飛び出す彼は43万石のお殿様であった伯爵家伝来の甲冑を蹴倒して出て行きます
平民が華族を打ち倒した実質的な革命であったことを示すシーンでした

しかし、彼は次第に金では尊敬を得られない、結局華族には心の内では見下されることは変わらないと知ります
長女も華族のプライドよりも真の愛情の尊さを知ります
彼の羽振りがよいもの非合法な闇取引のものでなく汗みず懸命に働いて築いたものと知ります
それも自分を迎えたい一心で
こうして二人は人間としての心情を裸で見せたとき、一組の男女になっていくのだというシーンとなります

伯爵も日陰の存在であった妾の女性を正式に結婚を宣言してみせます
長男も騙して別れた筈の小間使いの女性を抱き寄せます
原節子が演じる次女も、御屋敷の家令や小間使い達も伯爵家の華やかな日々を懐かしみながらそれぞれの身を振る為の準備をみせます

それは新しい日本を、旧華族と平民が力を合わせて建設していくのだという希望を象徴しています

新しい日本の未来は伯爵邸のすぐ前に打ち寄せる太平洋の様に前途は洋々と開けているのです

次女が伯爵の挙動に不審を抱いて彼を探すシーンでのカメラワークなど演出も優れており、気高いテーマといい優れた傑作だと思います

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あき240
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