有りがたうさん

劇場公開日:

解説

昭和の名匠・清水宏監督が、川端康成の短編小説「有難う」を上原謙主演で映画化したロードムービー。伊豆地方の美しい自然を背景に、バス運転手と乗客たちが織り成す人間模様をユーモラスに描く。道を譲ってくれた人々に「ありがとう」と声を掛けることから、「ありがとうさん」と呼ばれて親しまれているバス運転手。そんな彼のバスに、貧しさから東京に売られていく娘とその母親、訳ありの女、威張り散らすヒゲの紳士らが乗り込んでくる。

1936年製作/日本
配給:松竹大船
劇場公開日:1936年2月27日

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映画レビュー

4.5無底的な善意

2022年5月31日
iPhoneアプリから投稿

ぐわんぐわんと揺れるバス、そして乗客。こういう立体感のある動きを撮るメソッドが1936年にして既に確立されていたことに驚く。

わずか20数個の宿を巡る間にも、無数の人々の存在が立ち現れ、交差し、やがて消えていく。東京に売られていく村娘、身勝手な髭親父、訳知り顔の女。乗合バスというごく限られたシチュエーションにもかかわらず、物語には奥行きと説得力がある。わずか一言二言を口にしてバス(=物語)を降車した人々にさえ有機的な残香が感じられるというのは本当にすごいことだと思う。

好きなシーンはいくつもあるが、知人の結婚式に向かう夫婦と葬式に向かう老爺がうっかり車内で鉢合わせてしまうシーンが一番好き。夫婦は「縁起が悪いから」と言ってバスを降りるのだが、老爺もまた「さっきの夫婦には申し訳ないことをした」と言ってバスを降りる。滑稽と人情とが絶妙な塩梅で混じり合った名場面だ。

そういえば先日、レンタカーで都内を走っていて合流待ちの車に道を譲ることがあった。その車はこちらに何の謝意も見せることなく、一気呵成に加速してそのまま視界から消え去ってしまった。ありがとうくらい言ったらどうなんだよ、と思わず不貞腐れてしまった。

これは「みんなもっと有りがたうさんを見習えよ」という話ではない。むしろ逆だ。有りがたうさんは歩行者や馬といった無数の障害物に進路を阻まれているにもかかわらず、それらに悪態をつくどころか、彼らがほんの少しでも道を譲ってくれたことに対して「ありがとうー」と感謝の言葉を返している。

見返りを求めることなく素朴な感謝を振りまくことができる彼が、街道沿いの人々から絶大な信頼を得ているというのも至極頷ける話だ。彼ならたとえ目の前で割り込み運転を食らってもニコニコと微笑んでいられるだろう。そのくらい超然とした生き方ができるようになれば素敵だろうな、とは思うものの、本作を通してなんだかんだ一番共感できたのはやっぱりあの姑息で傲慢な髭親父なんだよな…

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因果

4.0心が温まる素晴らしいロードムービーです

2020年2月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

名作です
1936年の作品ですから84年も昔です
いくら田舎の乗り合いバスといえど、車内での乗客同士、運転手との会話は濃密です
21世紀の私達が失った人間への関心がここにはあります
心が温まる素晴らしいロードムービーだと思います

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あき240

4.0名作掘り起し

2019年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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odeonza

3.5深みがある。

2016年5月26日
PCから投稿

悲しい

幸せ

戦前の映画で盛り上がりもしなければ、たいした葛藤もない。でも深みが出ている良い映画だと思います。
戦前の田舎の風景って江戸時代とほとんど変わらないなぁとか、昔の人はゆっくり喋ってたんだなぁとか風物の勉強にもなります。

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タンバラライ
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