アッシイたちの街

劇場公開日:

解説

“アッシイ”と呼ばれるバラバラの機械部品のように、一つ一つでは役に立たないが、集まって大きな連体の力を発揮しようとする京浜工業地帯の下請け町工場で働く若者たちの姿を描く。脚本は「若者たち」の山内久、監督は「あゝ野麦峠」の山本薩夫、撮影は山本駿がそれぞれ担当。

1981年製作/129分/日本
配給:共同映画全国系列会議
劇場公開日:1981年3月28日

ストーリー

素人のロック・バンド“アッシイ”のメンバーは、小さな町工場早坂製作所の次男坊早坂浩、バー“エデン”のバーテンダー、青木、ラーメン屋の千葉、学生の原田、バフ屋の李それに母と二人でターレット屋をやっている小川努といった零細工場地帯に生きる貧しい若者たちだ。バンドの合宿練習から早坂浩と妹の美恵が帰って来たとき、家では、兄の茂が注文主の横井から、納期が遅れたことで嫌味を言われていた。一家の重要な働きての彼らは悪天候のため予定日に帰れなかったのだ。茂は早くから父親を亡くし、12歳のときから長男として、油まみれになって働き、母親の春、浩、美恵、末弟の隆を育ててきたのだ。茂は父親が死んでからの相談役である佐川精機の社長佐川信次の協力を得て、下請けから自立営業の転換を考えていた。浩はそんな兄の無謀な計画に反対する。しかし、母、春が「兄ちゃんの言う通り皆でやろう」と断を下し、計画は実行に移された。佐川の援助で独立は順調に進んだ。茂の下請けをする努は美恵と愛し合っていたが、茂の仕事だけの生き方を嫌っており、自分の将来にも絶望していた。そんな努を、美恵は意を決してラブホテルに誘った。浩は、青木が働くバーの子持ちのホステス和美に恋していたが、男に裏切られ息子を育てることだけが生がいの彼女は、仕事で苦労する茂に同情的だった。一方、青木は美恵を密かに慕っており、努と彼女の関係を知って、店の金を盗んで姿をくらましてしまった。ある日、佐川精機が連鎖倒産してしまった。茂は佐川を励ますが娘の真理子は、父にもうそんな元気がないと首を振る。茂は、佐川の債権者の一人、三隅精機の三隅と、佐川の工員を引き取って、より大きく再出発することにした。佐川に対する恩議や家族同様に働いてきた自分の工場の工員への仕打ちに、浩は家を飛び出し、母の春も去っていった。残された茂は必死に働き、努に「美恵のために頑張ってくれ」とはじめて責任をまかせた。納期を控え、努は徹夜で製品を間に合わせた。しかし、その部品は数ミリの違いですべて使い物にならず、絶望のあまり、努は美恵の前で飛び込み自殺した。潰れた鉄工所に“アッシイ”の仲間が集まり、努の通夜をして酒を飲んだ。青木も戻ってきた。佐川の娘、真理子もいる。それぞれが何かに対し怒り、何かに傷ついていた。そこで、浩が「茂が努を殺したみたいに言うのは許さないぞ」と初めて兄をかばった。茂の会社は倒産し、経理係の持ち逃げで何も無くなっていた。茂はもう一度やり直そうと家に帰ると、みんなが彼を待っているのだった。

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映画レビュー

4.0アリとキリギリス、両方居てうまくいく

2015年11月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

幸せ

2015/11/20、VHSで鑑賞。
この作品が公開されたのが1981年だから、これからバブルへと向かうわけで景気のいい時代だと思うんですが、この映画に出てくる若者も今の若者と同じように将来を悲観しています。この当時から若者の意識は、こんなだったんでしょうか?
年寄りたちは自分たちが若いころに苦労した経験を引き合いにして、音楽に入れ込み仕事より自由のほうが大事だという若者たちに説教をします。しかし、若者たちはそんなの気休めだと取り合いません。茂(古谷一行)や年寄りたちが苦労して仕事をしても、結局大手メーカーの理不尽な要求に振り回されているのを見ているので、無理も無いのかも。

仕事が何より大事という茂や年寄りたちと、自由が大事だという若者たちの対立は、どこか右翼と左翼の言い争いを連想してしまいました。防衛力を高めることで平和を維持しようとする右翼と、話しあい理解しあうことで平和を維持しようとする左翼。実際に言い争う茂とその弟の浩の会話で戦争という言葉が出てくるので意識して作られていると思います。
映画のラストの方で、仕事への意識の低いものとは一緒に仕事できない、と家を出ていこうとする茂に母が泣きながら、仕事一辺倒で強引に引っ張る茂と、それに文句を言い足を引っ張るような浩、両方居てバランスが取れるんじゃないか、というようなことを言いますが、まあそうなのかもしれませんね。

底辺の労働者は大手メーカーの理不尽さに苦しめられること、人生哲学においても、政治的イデオロギーにおいても現実主義と理想主義の対立、時代が変わっても変わらないなあとか、いろいろ考えさせられた。

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