悪太郎

劇場公開日:

解説

今東光の原作より、「ハワイの若大将」の笠原良三が脚色、「野獣の青春」の鈴木清順が監督した文芸もの。撮影は「結婚作戦要務命令」の峰重義。

1963年製作/95分/日本
配給:日活
劇場公開日:1963年9月21日

ストーリー

頃は大正の初期、素行不良、悪太郎の名を着せられて神戸の神聖学院をクビになった紺野東吾は、母の知人である豊岡中学の近藤校長に預けられた。転校一月を経ずして悪太郎の悪名は全校にひろがった。五年生の風紀委員は、東吾を目の仇にして、ことごとく対立したが、いつも東吾の屁理屈にやりこめられていた。そんなうちに東吾は校医の娘で豊岡小町と騒がれている恵美子を知った。友人の丸井から、風紀委員の鈴村も恵美子に夢中だと知った。東吾は鈴村を短刀で脅かし恵美子から手を引かせた。そして、自分は恵美子に近づく機会を着々と狙っていた。ある日、下宿の前でにわか雨に降りこめられた恵美子とその友人の芳江をみつけた東吾は、二人を自宅に招き入れ、恵美子と文学論をたたかわせた。その帰途、恵美子を強引に神社の境内に誘い、いきなり唇を奪った。恵美子も東吾を好いていたのだった。これを機会に、二人の仲は急速に深まっていった。二人の逢引きの場所は、旅館の娘である芳江の手引によって、旅館の部屋が提供された。ある日曜日、恵美子は京都の叔母の家に行くことになった。京都の旅館で初めて結ばれた二人は、叔母の家に行かずに芳江の旅館に帰ってきてしまった。それを鈴村がみつけたから話は大きくなった。風紀部がくる。校長が来る。岡村が来るで二人の仲は一挙に明るみにでてしまった。東吾は退校処分になった。恵美子は親戚の家に預けられ、東吾は東京に出た。東吾は小説家になるため苦学しながら学校に通った。そんな時、恵美子は急性結核となって死んだ。東吾は、その悲しみに負けることなく、小説家としての勉強にはげんでいくのだった。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.0"悲恋"

2021年4月19日
iPhoneアプリから投稿

悲しい

楽しい

興奮

題名からイメージする悪ガキの主人公ってよりも、インテリで頭の回転が早くて口も上手い、自分の信念を貫く正義感の強い好青年。

スタッフに木村威夫の文字が、白黒だから美術的に"清順美学"の良さが発揮されているのか判断が出来ない。

風紀委員の上級生たちを論破する場面は理にかなった説得力ある話術でスカッと気持ち良く、男女の恋愛描写が可愛らしくもありラストは切ない。

初期から昔の鈴木清順を観られるだけ、今の所は基本的に"悪太郎"ばかり撮っている清順的不良の美学に心酔され、カルト臭をプンプンと嗅ぎつける!?

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万年 東一

3.5粋な大正青年の青春と恋

2014年1月26日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

楽しい

鈴木清順の1963年の作品。

大正初め。素行の悪さから“悪太郎”と呼ばれる青年・東吾。母の知人が校長を務める中学に預けられた彼の青春と恋。

鈴木清順と言うと、独特の色彩感覚や奇想天外な展開の作風がもはやトレードマークだが、本作ではその片鱗は見当たらない。
意外や意外、真っ当な文芸&青春映画。
しかしこの年、「関東無宿」や「野獣の青春」も撮っており、実は器用な職人監督である事も思い知らされる。

さて、“悪太郎”とは、手の付けられない、悪戯好き、もしくは乱暴な男児の意。
主人公の東吾青年、勿論、困った破天荒な所もある。
転校が不服で登校初日から人力車に乗って登場、不合格になろうとわざと転入試験をいい加減に解答、試験を待つ間は茶を飲み煙草を一服…(笑)
が、決して荒んでいる訳ではない。
破天荒故、当然上級生に目を付けられるが、威張り散らすだけの奴には面と向かって物を言う。
文学好きな面もあり、読書を禁じる風紀係の上級生に啖呵を切る。かと思えば、その風紀係に文学の素晴らしさを丁寧に教える。
映画の後半はヒロインとの恋。想いは真っ直ぐに伝える。
粋な大正の青年像。
うっすら「倍返し」の人と被って見えた。

ラストはある悲しい別れ。
悲しみを乗り越え、一歩踏み出す主人公の姿には、若者へのエールが込められていた。

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近大
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