オリヲン座からの招待状

劇場公開日:

解説

人気作家・浅田次郎による短編集「鉄道員」の最終話として所収された同名作を、「たそがれ清兵衛」の宮沢りえと「それでもボクはやってない」の加瀬亮主演で映画化。昭和30年代、京都の映画館・オリヲン座の館主である松蔵が病に倒れ、やがてこの世を去る。松蔵の妻トヨは、彼の弟子であった留吉と共に映画館を引き継ぐことを決意。映画産業が傾きはじめる中、貧しさに耐えながらも必死に映画館を守り抜こうとする2人だったが……。

2007年製作/116分/日本
配給:東映
劇場公開日:2007年11月3日

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映画レビュー

4.0【”僕がオリヲン座と、君を守る。”京都・西陣の小さな映画館を舞台にした、映画を愛する心優しき男女の姿を描いた作品。レトロスペクティブな雰囲気と、情感溢れる佳き作品である。】

2022年11月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

■昭和25年の開館以来、映画館「オリヲン座」の館主を務めてきた松蔵(宇崎竜童)が病に倒れる。弟子入りを赦された留吉(加瀬亮)が志を継ぎ、先代の妻・トヨ(宮沢りえ)と立った二人で、オリヲン座を守ることになる。
 だが、TVの普及により映画産業が斜陽になり、周囲の人間に留吉は”館主になって、良かったな!”と陰口を叩かれながらも2人は映画を愛し、互いを思いやり続ける。
 そして、二人は年老い、「オリヲン座」を閉館する事を決め、馴染みの客に招待状を送る。
 その中には、小さい頃から二人に子供の様に可愛がって貰った、ゆう(田口トモロヲ)と、よしえ(樋口加南子)の姿もあった・・。

◆感想<Caution!  内容に触れています。>

・留吉を演じた加瀬亮が宮沢りえ演じるトヨを気遣う姿が、気高く、品性高く感じる。男とは、女性に対しては、かくありたいものだと思う。

・TVの普及により、客が一人もいない映画館の寂しき姿。そして、誹謗中傷を受け、更に客足が落ちたことを自分のせいだと責める留吉が、陰口を叩く愚かしき男に”止めて下さい!”と、何度も頼む姿。

■足を怪我したトヨを気遣い、蚊帳の中に、捕まえて来た蛍を、留吉が放つシーンは素晴らしい。
 初めて、二人が手を重ねたシーンでもある。

・貧しい中で、トヨはゆうと、よしえに飴を与え、留吉は映写室から二人に映画を見せる。
ー キラキラした目で、夢中で映画を観る二人。少しだけ「ニュー・シネマ・パラダイス」を思い出す。-

・閉館の言葉を述べる老いた留吉(故、原田芳雄)の姿は、沁みたなあ・・。

<映画は娯楽であるが、文化でもあり、良き作品は終生心に残る、と私は思う。
 今作は、そんな映画を愛した小さな映画館を長年守って来た二人の美しい恋の物語である。
 レトロスペクティブな風合もとても良い作品でもある。>

■コロナ禍以降、映画館は大変な状況に陥ったが、昨年あたりから客足が戻って来た気がする。良い作品が多く公開されているのも、その理由だろうが、10代から20代の若者が多くなった気がする。TV離れの影響かも知れないが、嬉しい事であると私は思います。

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NOBU

3.0せめてホクロを・・・

2021年6月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 『無法松の一生』(1943)は内務省の検閲により、松五郎が未亡人に想いを打ち明けるシーンがカットされたという。そんな恋の告白でさえも禁じられるという恐ろしい戦時下の日本。しかし、戦後は占領軍によって封建的な部分をまたまたカットされたというのだ。それをそのまま公開しても名作として残るのだから、素晴らしい作品なのでしょう・・・未見。

 こうしてオリヲン座の映画館では劇中フィルムとして、無法松や、『二十四の瞳』『君の名は』などを流すので、悲鳴をあげたいほど映画ファンにとっては嬉しい作品であるのです。ただ、個人的には時代が早すぎました。そして、主人公のトヨ(宮沢りえ)と留吉(加瀬亮)の関係そのものが無法松へのオマージュとして描かれてはいるものの、大事な大事な告白シーンが丸々カットされていたような・・・。映倫はあるけど、さすがに検閲制度の無い現代においてここまでカットされては感情移入しにくいというのも難点の一つ。

 1961年の時点で日本の映画産業は絶頂期を迎え、その後テレビの普及により斜陽となってしまうのですが、ストーリーを考えると少しずれています。大津からやってきた若者が映画館館主の座と未亡人を得るために悪い噂が流れてしまうという原因があるにはあったけど、それだけでは弱かった。さらに、経営の本当の苦しみは70年代に入ってから。どうもオリヲン座は東宝の映画をかけなかったようですけど、寅さんのリバイバルでも上映していたのなら客は入っていたのかもしれません。ピンクをかけなかったという点だけは子どもを大切にしていたとわかる台詞でした。

 『ニュー・シネマ・パラダイス』を彷彿させる映写室。さすがに宇崎竜童の演じた松蔵はアルフレードに対抗するにはいいキャスティング。フィルムが流れるように落ちていくことで彼の死を表現したところなんてのは悲しいけれど、なかなかの演出でした。宮沢りえも加瀬亮もよかったのですが、樋口可南子がやはりよかった。田口トモロヲだけは、こんな役だともったいない・・・もっとカルトな役じゃなきゃ・・・

 キスシーン集に見合うモノ。まったくありません。さすがに告白シーンすらカットされるのですから、純愛も純愛、もしかするとプラトニックな関係だったかとまで想像させるくらい奥ゆかしい日本版『ニュー・シネマ・パラダイス』だったのかもしれません。

【2007年11月映画館にて】

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kossy

3.5派手さはありませんが

2021年5月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

幸せ

浅田次郎の世界観が良く表れていたと思います。多分映画館だけではなく、文化や芸能、工芸などなど、戦後直ぐにはこういう人達が沢山いたんだろうなあ。派手派手しさはありませんが、日本的な良い作品でした。

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ミカ

4.0純愛すぎて残酷

2020年1月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

この2人は果たして幸せだったのだろうか?亡き夫、恩師のために、オリオン座のために、愛し合ってるのに結婚もせず、子供も授からず生涯を生きた2人。昔ながらの劇場や売っているもの、当時実際にやっていた映画など、興味をそそられた。今こんな劇場あるんだろうか。

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いつこ
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