劇場公開日 2007年12月1日

「リメイク版『マイ・ブラザー』公開記念!」ある愛の風景 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5リメイク版『マイ・ブラザー』公開記念!

2010年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ハリウッドでリメイクされた『マイ・ブラザー』の公開記念してレビューアップします。

 タイトルから想像できないとてもシリアスな映画で、主人公の選択については命がかかったら止む得ぬとはいえ考えさせられるものでした。
 アフガンの国連維持活動(ISAF)といっても、デンマークの軍隊から派遣された主人公の活動は戦場そのもの。民主党の小沢さんはこんな場所に自衛隊を投入しようとしていたのかと驚きました。
 そして戦場で捕虜になると、いろいろ悲惨な体験を積むことになります。ミカエルも人に言えない仕打ちを経験し、心に深い傷を持ってしまいます。
 運良く救出するものの、誰にも言えない秘密を持ったしまったミカエルは、その秘密に次第に心を狂わされていきます。
 まして戦死したことになっている間に、不仲だった弟と愛する妻が嘘のようにうち解け合っている姿を見て、よからぬ妄想がミカエルを嫉妬に駆り立てます。
 ミカエルも人生を取り戻そうと必死なのですが、どうにも、なかなかその秘密の一言が言えないものです。そんなに苦しいのなら、いっちゃいなよ~と叫びたくなる作品でした。
 このように書き込むと、なかなかいい話ではないかと思うでしょうけれど、シーンごとの描写が丁寧すぎて、やや疲れました。女性監督なりのこだわりと細やかさなんでしょうけれど、もう少しテンポを上げて、ミカエルの苦悩にフォーカスすべきでした。
 そのためラストが中途半端な感じで終わっているのが残念です。もっと弟ヤニックへの疑いを盛り上げていけば良かったのではないでしょうか。

 ところでこの作品は、遠くの戦争が家族の平和を壊すところを描いています。夫を戦地に取られた妻は、何の術もないままに悲報を受け取るしかない不条理に襲われるということでは、「しあわせな孤独」の交通事故や「アフター・ウェデング」の不治の病同様、誰の身にもそしていつ起こっても不思議ではない出来事として、戦争が描かれています。
 泥沼化するアフガンでは拉致事件が頻発し、日本でもいまそのアフガン支援のついて協議しています。平和ぼけといわれて久しい日本人ですが、小沢さんの主張に政府が妥協し、アフガン国内に自衛隊を派遣するような事態となったとき、この作品は遠い外国の出来事ではなく、より身近かな同朋が同じ思いをすることになる可能性を秘めていると思います。

流山の小地蔵