劇場公開日 2007年10月6日

「「サヨク」オヤジ丸出しのまんまをトヨエツが演じている」サウスバウンド(2007) 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「サヨク」オヤジ丸出しのまんまをトヨエツが演じている

2008年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

刑事ドラマ『相棒』の水谷豊もイメチェンした当たり役となったけれど、このサウスバンドでの元過激派のパパ役に挑んだトヨエツも実にこれまでの二枚目的なイメージを払拭するユニークなキャラを引き出していました。

 トヨエツが演じている主人公は、60年代ならいざ知らず、学生運動のスピリットを20年近く経った今も引っ張っている特異なキャラクター。そのパパが巻き起こす騒動の数々は、アナクロ(時代錯誤)で可笑しかったです。
 今日公権力(といっても年金集金人、学校長、警官クラスだが)に純粋に怒って、「ナンセンス」と指さし糾弾する「隠れサヨク」どころか「サヨク」丸出しのまんまをトヨエツが演じているのだから、それを見ているだけで楽しかったです。

 ただ物語は、東京編と沖縄編に分かれていて、東京編はあくまで前振りなんだけれど、家族が何で沖縄に移住することになったのか、沖縄編に移行するまでが長かったと思います。

 東京編では、主人公のパパの息子がいじめグループの親玉をやっつけることが描かれているのですが、きっと原作者や森田監督もいじめ問題に関心があったのでしょう。

 後半の沖縄編では、海と空と自然の美しい南の島へ移っての展開で、美しい西表島の風景だけでも、こういうところで暮らせたらとホッとさせられました。(この後見ためがねのほうが強烈でしたが)
 ところがですね、このお父さんホッとはされてくれたりしません。
 ここでも島を乱開発しようとする業者が引っ越し先の建物を強制収容使用として、それと断固戦い始めます。しかも支援しようとする自然保護団体をよそ者とはねのけて、家族だけで対峙するのです。
 父親に引っ張られる家族たちが父の理論が無理だと分かっても、何か説得性があるのを認めて、ついて行く姿を森田は暖かく描いていました。決して深刻にならない描写には好感が持てます。

 ラストストーリーはネタバレしませんが、こどもたちを置いたままトンズラするのは、親として無責任だなとは思いました。そんな親だから、別れ際に「みんな、お父さんを見習うな!お父さんは過激だからな」と父親が子供たちに言い渡す言葉が愉快でしたね。

 天海は久しぶりにいい芝居をしていましたよ。

流山の小地蔵