劇場公開日 2007年7月28日

リトル・チルドレン : インタビュー

2007年7月31日更新

トッド・フィールド監督インタビュー

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■ジャッキー・アール・ヘイリーは僕のアイドルだった!

──“カムバック賞”ものの、ジャッキー・アール・ヘイリーは「ヤング・ゼネレーション」(79)などで、アイドルだったわけですが、キャスティングはどういった経緯で?

鮮烈なカムバックを果たした ジャッキー・アール・ヘイリー
鮮烈なカムバックを果たした ジャッキー・アール・ヘイリー

「僕にとってもアイドルだったよ(笑)。ジャッキーが今まで10年ちょっとの間、ハリウッドから消えて何をしているのか知らなかったが、まだ脚本の初期段階だった頃に彼と出会ったんだ。彼は、僕が滞在していたニューヨークのホテルに訪ねてきて、演技を収めたビデオを置いていった。翌年になって、ロニーという小児性愛者の脚本のパートが大きくなって、その役をオーディションする段階になって、『そういえば、ジャッキーってお誂え向きの男がいたな』と思い出したんだね。ジャッキー自身の力で奪い取った役柄だけに、アカデミー助演男優賞候補になったのはうれしかった」

■“サバービア”の登場人物全てが悲劇/喜劇に向かっていく

──この映画は、大都市の郊外に住む“サバービアン”、つまり欲望むき出しの大人になりきれない大人たちを描いていて、そこには現代的な深いテーマが潜んでいますね。

“大人になりきれない大人たち”は現代的な深いテーマだ
“大人になりきれない大人たち”は現代的な深いテーマだ

「たしかにこの映画には、30代の男女が抱える現代的な問題を含んでいる。ブラッド(パトリック・ウィルソン)とサラ(ケイト・ウィンスレット)は“サバービア”の公園で出会い、古くからある因習にとらわれずに愛し合う。最初僕が小説を読んでとてもリアルに感じられたのは、2人が出会う公園のベンチでリッチな女たちが交わす会話だった。その内容はニューヨーク辺りのカフェでもある、女たちが夫の不平不満の暴露大会にも似て、とてもリアルだ。彼女たちは上っ面で生きている。原作にホレたのもそのリアルさなんだが、ケイトとパトリックのエモーショナルなセックスシーンも含めて、映画の登場人物全てが愛と憐れみ、罪の意識に思い悩み、極限的なドラマ、つまりコメディ(喜劇)とトラジディ(悲劇)に向かっていく。

50年代のダグラス・サーク監督の頃のメロドラマには、社会的なテーマ性があって、人種差別やゲイ差別などの問題を含んでいた。現代でも、ペドロ・アルモドバル監督はそのスタイルを踏襲しているし、トッド・ヘインズ監督などは“ルック”もそっくりなサーク風メロドラマ『エデンより彼方へ』を撮っている。しかし、僕は“サバービア”における登場人物たちが抱く妄想や幻想や欲望にこそ興味があるんだ。そのメロドラマには、実に人間的なさまざまな問題が盛り込めるからね」

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