劇場公開日 2007年7月28日

リトル・チルドレン : インタビュー

2007年7月31日更新

「イン・ザ・ベッドルーム」でアカデミー脚色賞にノミネートされた映画監督・脚本家のトッド・フィールドが、5年の空白を経て、トム・ペロッタの同名ベストセラー小説を映画化したのが、現在公開中の「リトル・チルドレン」。フィールド監督自らが再び脚色賞にノミネートされたほか、主演のケイト・ウィンスレットが5度目の主演女優賞に、13年ぶりに俳優復帰したジャッキー・アール・ヘイリーが助演男優賞にノミネートされるなど、大きな話題を振りまいた。一見すると、米ボストン郊外の住宅街を舞台にした専業主婦と子持ちの主夫との不倫をメロドラマだが、悲劇と喜劇がないまぜになったカタルシスあふれるラストには、誰もが驚愕するしかない。そのフィールド監督に、創作の秘密を聞いた。(佐藤睦雄)

トッド・フィールド監督インタビュー

■ケイト・ウィンスレットは最高に官能的な演技を見せた

ブロンドとブルネットが対照的な2人のヒロイン
ブロンドとブルネットが対照的な2人のヒロイン

──ブロンドのケイト・ウィンスレットとブルネットのジェニファー・コネリーを配置していますね。

「脚本の段階でかい? いや、最初は何も考えていなかった。脚本を練って仕上げてから、キャスティングに入ったんだ」

──主夫をやっているパトリック・ウィルソンは、「マルホランド・ドライブ」のヒロイン2人のような、ブロンド(愛人)か、ブルネット(妻)か、究極の選択を迫られる!

「ははは、それは面白い考えだ(笑)。デビッド・リンチ風に答えてみよう。『Yes, all means everything(全てが全てを意味している)』(笑)。ケイトも、ジェニファーも、髪の毛の色など意識していなかったけど、自分で書いた脚本を深く読み込んだ上でのファーストチョイスの女性だった。特に、ケイトは彼女のキャリアの中でも、最高に官能的な演技を見せていると思う」

■アカデミー賞ノミネートからの5年間の秘密を語ろう

──前作「イン・ザ・ベッドルーム」から本作まで5年かかってますね。その間、どんなふうにこの映画と格闘してきたんですか。

画像2

「01年1月に完成したばかりの『イン・ザ・ベッドルーム』をサンダンス映画祭に持って行った。その後半年間、ミラマックス(当時)のハーベイ・ワインスタインにヘンにいじられないように戦って、11月から数週間(ロサンゼルス&ニューヨークのみの)限定公開の予定でいたら、オスカーレースにいくつかノミネートされて、02年3月まで全国公開された。結局、製作スタートから14カ月間かかりきりだった。

その後、半年ほどオフをもらって、次のプロジェクトとして、リンカーン米大統領の暗殺犯の兄で、アメリカ演劇界の大物だったシェイクスピア役者、エドウィン・ブースの物語を考えた。19世紀の最も情熱的だった人物だ。しかし映画化するとなると、『天国の門』みたいに映画会社1つぶっ潰しかねないほど、莫大な予算がかかることが分かって断念した。

次はリチャード・イエーツの小説『Revolutionary Road』(50年代の大都市郊外“サバービア”に住む夫婦を描くドラマで、現在ケイト・ウィンスレット&レオナルド・ディカプリオ主演で撮影中)を映画化を企画した。サム・メンデス監督がどんな契約をしたか知らないが、当時は僕がニューヨークのオフィスで働いていた頃の元ボスが映画化権を持っていた。その元ボスは亡くなっていたから、未亡人が権利を管理していた。彼女がいう条件は『夫の脚本通りに撮ること』だったので、自分で脚本を書きたかったから、辞退した。

それからトム・ペレッタの原作を友人に紹介されて、『リトル・チルドレン』のレッドスクリプト(初稿脚本)を書き上げた。03年のことだ。その後04~05年の2年間脚本を手直しして、06年夏にやっと撮影に入ることができた。それで、アカデミー脚色賞の候補になったりして今ここにいるわけさ(笑)」

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インタビュー2 ~全てが悲劇/喜劇に向かっていく登場人物
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