めがね : 新作映画評論

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新作映画評論

めがね めがね 9月22日よりテアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマ、シネセゾン渋谷ほかにてロードショー

余白だらけの時間と空間に、捨てがたい不思議な魅力がある

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これって「かもめ食堂 Part2」?という視線で見られても致し方ない。前作の好評を受け、同じ編成の主要スタッフ&キャストに、都会人のスローライフ願望に応えようとする意図がなかったと言えば嘘になるだろう。現実から逃れてきた訳ありの主人公は、ケータイの繋がらない南の島で、うまい食べ物と、希薄な人間関係の中、ただ時を過ごす。前作以上に劇的要素は消え失せ、時も感情も凪のように止まっている瞬間すらある。

干渉されぬ場所こそユートピア――そんな消極的な理想を抱くキャラは、まさに今どきの肖像だが、それをそのままデッサンした演出は物足りない。物語ることをやめるなら、せめて人物にふくよかな奥行きをもたせるべきだった。しかしこの余白だらけの時間と空間には、捨てがたい不思議な魅力がある。

ふと、「豊かな自然=癒し」という図式に疑念を抱き始めた。ロケ地は与論島。奄美諸島やさらに南の沖縄の時空をさかのぼり、本土の都合で征服され放棄された歴史に思いを馳せてしまう。繰り返す白い波は、悲惨な過去を洗い流しているけれど、本作が寡黙すぎるゆえ、自ずと想いをめぐらしてしまうのだ。

この“真っ白なノート”を埋めるのは貴方次第。僕は、島に秘められた情念や空気に気づかされた。土地に宿る悲しみが都会人の虚ろな心に憑依しているように思えた。傷つき疲れた者が南を目指すのは、土地に抱かれ、悲しみを共有するためなのかもしれない。

清水節

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  • 人生の小休止に、南の海辺の町を訪れたタエコは、不思議な一軒宿ハマダに宿泊する。しかし、観光する場所も何もない小さな浜辺の町で、マイペースすぎる住人たちに振り回されるタエコは、耐えかねてハマダを出て行くが……。フィンランドの日本食堂を舞台に、スローライフな日常を描いて話題となった「かもめ食堂」の監督・荻上直子、主演・小林聡美が、今度は南の海辺を舞台に人生を見つめなおす人々をゆるやかに描く。
  • 監督・脚本:
    荻上直子
    撮影:
    谷峰登
    音楽:
    金子隆博
    出演:
    小林聡美、市川実日子、加瀬亮、光石研、もたいまさこ、薬師丸ひろ子
    2007年日本映画/1時間46分
    配給:
    日活
  • 9月22日よりテアトルタイムズスクエア、銀座テアトルシネマ、シネセゾン渋谷ほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

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