素粒子 : 新作映画評論

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素粒子

劇場公開日 2007年3月24日
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素粒子 3月24日よりユーロスペースにてロードショー

文学臭さを遠ざけた、力の抜けた好篇

画像

個人的にも思い入れのある小説の映画化だけに、正直期待と心配が半々といった感じでこの映画を見たのだけど、これが予想以上に面白い。すばらしく知的で壮大な構想を備えた原作全体を再現するというより、あるエッセンスだけを抽出、文学臭さを遠ざけ、いい意味で力の抜けた好篇に仕上がっている。

セックスにとり憑かれた文学教師と、女性関係には臆病ながら天才的な才能を見せる科学者、というともに情緒不安定な異父兄弟が主人公。性の解放を主張するヒッピー世代の母親を持つ2人は、まともな家庭環境で育たなかったためか、それぞれに両極端なかたちで愛情を渇望しつつ絶望してもいる。いつの頃からか僕らはセックスや若さに絶対的な価値を付与する文明を生きていて、それは楽しくなくては生きる価値なんかない……といったレジャー重視の資本主義への隷属をも意味している。異性との関係に成功しなければ“負け組”とされる一方で、いつまでも若くなければならないといった不可能な欲望にとり憑かれた文明と社会。でも、楽しくなければならない……といった強迫観念が僕らにとって逆説的に“苦しみ”や重圧となるのではないか? 恋愛への渇望が逆に恋愛(コミュニケーション)への恐怖を日々僕らに植えつけるのではないか? そんなテーマを巧みに扱う映画だけに、僕らはそれぞれに切実な感慨を胸に映画館を後にすることになるだろう。

北小路隆志

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