今宵、フィッツジェラルド劇場で : 新作映画評論

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今宵、フィッツジェラルド劇場で 今宵、フィッツジェラルド劇場で 3月3日より銀座テアトルシネマ,Bunkamuraル・シネマにてロードショー

ロバート・アルトマンは最後まで役者をそそのかした

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なるほど、「今宵、フィッツジェラルド劇場で」には、死や終末の匂いが強く立ち込めている。公開番組は最終回を迎えた。劇場は間もなく取り壊される。白いコートを着た死の天使も現れる。老歌手は楽屋で静かに息を引き取る。歌手たちは声を合わせて「急いで別れを告げないで」と歌う。そしてなによりも、これはロバート・アルトマンの遺作だ。

が、だからといって「挽歌」の趣きばかりを見いだそうとするのはつまらない。「今宵」には、穏やかな皮肉や骨太の笑いもずいぶん仕込まれている。フェリーニ映画に通じる祝祭的な空気も漂っている。それを可能にしたのは、役者の力だ。急いで付け加えると、「アルトマンにそそのかされた」役者の力だ。

たとえば、メリル・ストリープとリリー・トムリンの扮する姉妹の姿を思い出してみよう。通常、ストリープは白黒のはっきりしすぎた芝居をする。うるさいほどに露骨な感情表現をする。ところが、この映画の彼女は、鈍さを線の太さに変える。うるささを頼もしさに変える。感情の表出は歌に託し、受けにまわったトムリンとぶっきらぼうなやりとりを交わす。トムリンは、持ち前のタイミング感覚で短いカウンターを打ち返す。すると、空気が変わる。「祝祭と挽歌」のユニットがひと組誕生する。ユニットは、ほかの場所でも生まれる。アルトマンは、役者を信頼しつつ、複数のユニットを楽しげに組み合わせていく。だからこそ「今宵」は味わい深い。「おもしろうてやがて悲しき」映画というよりも、「せつないが楽しく」、どこか未来を感じさせる映画になっている。

芝山幹郎

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ABOUT THE MOVIE

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  • 今宵、フィッツジェラルド劇場で
  • 2006年11月に81歳でこの世を去った巨匠ロバート・アルトマンの遺作となった群像劇。アメリカの人気公開ラジオ番組“プレイリー・ホーム・コンパニオン”をモデルに、番組が打ち切られる最後のショーの舞台裏を、アルトマン監督らしいユーモアを織り交ぜながら綴る。撮影は実際のフィッツジェラルド劇場で行なわれ、その舞台上でメリル・ストリープ、リンジー・ローハンらオールスターキャストが吹替えなしで熱唱する。
  • 原題:
    A Prairie Home Companion
    監督:
    ロバート・アルトマン
    製作:
    デビッド・レビ、トニー・ジャッジ、ジョシュア・アストラカン、レン・アーサー、ロバート・アルトマン
    撮影:
    エドワード・ラックマン
    音楽:
    リチャード・ドボスキー
    美術:
    ディナ・ゴールドマン
    出演:
    メリル・ストリープ、リリー・トムリン、リンジー・ローハン、ギャリソン・キーラー、ウディ・ハレルソン、トミー・リー・ジョーンズ、ケビン・クライン、ジョン・C・ライリー、バージニア・マドセン
    2006年アメリカ映画/1時間45分
    配給:
    ムービーアイ
  • 3月3日より銀座テアトルシネマ,Bunkamuraル・シネマにてロードショー
  • オフィシャルサイト

今宵、フィッツジェラルド劇場で

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