明日への遺言 : 新作映画評論

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明日への遺言 明日への遺言 3月1日より渋谷東急ほかにてロードショー

偉人の超人性ではなく、気高い精神を描いた秀作ドラマ

画像1(C) 2007「明日への遺言」製作委員会

極東軍事裁判でB級戦犯とされた軍人の法廷闘争——そんな表現で括ってしまえば、一方的に日本を裁いた戦勝国の不正を告発する作品のように思えてしまう。しかし本作は、政治や民族を超え、毅然とした人間の品格を真摯に描いた静かなる秀作ドラマだ。

岡田中将とその部下は、無差別攻撃を行った米軍戦闘機搭乗員を処刑した罪に問われた。法で認められた「報復」であると証言すれば罪は軽減されただろうが、大量殺戮者の「処罰」は正当であると主張し、責任はすべて自分にあるという立場を岡田は貫く。感傷的な音楽と感情的なナレーションが、抑制の効いた演技との間に温度差を感じさせるのは演出の隙と言わざるを得ないが、理路整然と証言する岡田を小泉監督は殊更に謳い上げない。メディアは小泉堯史を師・黒澤明の継承という文脈で語りたがる。師弟関係というモチーフや緊張感みなぎるマルチカム撮影は、確かに黒澤映画を彷彿とさせる。だが、ギラついた全盛期の黒澤とは異なり、小泉は"鞘に収まった刀"のようだ。偉人を描いても、その超人性ではなく、気高い精神にこそにじり寄る。

法で白黒をつけるという裁判というシステムも、岡田の前ではプリミティブに思える。対立軸で捉える価値観を、彼の高潔な魂が融かすのだ。戦時下を冷静に捉えた明晰な言葉と、次世代の平和のために命を投げ出す姿は、「真善美」が失われた時代を生きる我々の無様な在りようを見つめ直させる。

清水節

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  • 明日への遺言 画像2
  • 明日への遺言
  • 第2次大戦後の戦犯裁判で、信念を貫き、部下の命を守った岡田資の生涯を綴った大岡昇平の「ながい旅」を、「雨あがる」「博士の愛した数式」の小泉堯史監督が映画化。第2次大戦時、無差別爆撃を実行した米軍兵士を正式な審理を行わずに処刑した罪で、戦後、B級戦犯として裁判にかけられた元東海軍司令官・岡田資中将。彼は家族が見守る中、法廷で「全ての責任は司令官たる自分にある」と主張する。彼に下された判決とは……。
  • 監督:
    小泉堯史
    脚本:
    小泉堯史、ロジャー・パルパース
    製作:
    原正人
    原作:
    大岡昇平
    撮影:
    上田正治、北澤弘之
    音楽:
    加古隆
    衣裳:
    黒澤和子
    出演:
    藤田まこと、ロバート・レッサー、フレッド・マックィーン、リチャード・二―ル、西村雅彦、蒼井優、田中好子、富司純子
    2007年日本映画/1時間50分
    配給:
    アスミック・エース
  • 3月1日より渋谷東急ほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)2007「明日への遺言」製作委員会

明日への遺言

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