殯の森 : 新作映画評論

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新作映画評論

殯の森 殯の森 2007年6月23日より、渋谷シネマ・アンジェリカ、千葉劇場にてロードショー

物語はシンプルだが、テーマは深い

画像1(C) KUMIE / Celluloid Dreams Productions/
Visual Arts College Osaka

緑濃き山間の道を、土葬へ向かう人々が連なる。オープニングから、ゾクッとした。スクリーンから放たれている空気が違う。重厚にして厳粛。奈良を舞台に作品を撮り続けてきた、河瀬直美監督にしか撮れない絵だ。今回は日仏合作で、編集や音響を仏人スタッフに任せ、技術面のクオリティがアップした事も大きいが、それ以上に、映像作家としての成長が作品に広がりをもたせ、そしてカンヌ国際映画祭グランプリ受賞へと繋がったと、確信する。

従来の河瀬作品と言えば、ストリッパーの波乱な人生を描いた「火垂」も、子供を亡くした家族のドラマ「沙羅双樹」も、観客を半ば強引に自分の世界へ向けさせるきらいがあった。しかし今回は、観客を”殯(敬う人の死を惜しみ、しのぶ時間・場所の意)の森”へと寄り添うように誘う。グループホームで出会った、33年前に亡くした妻を想う認知症のしげき(うだしげき)と、幼子を亡くした真千子(尾野真千子)が、森を彷徨い“喪の仕事”をすることで共鳴し合う。河瀬監督の十八番であるドキュメンタリーの手法を生かしながら丁寧に追った2人の心の機微は、12歳の神童・坂牧春佳のピアノ演奏と相まって、観る者に否応なしに”生と死”を考えさせる。物語はシンプルだが、テーマは深い。

次回作は、一転、コメディを手掛ける河瀬監督。紛れもなくこれは、河瀬監督・第一章の集大成である。

中山治美

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ABOUT THE MOVIE

  • 殯の森 画像2
  • 殯の森
  • 「萌の朱雀」「沙羅双樹」の河瀬直美監督が、“生と死”をテーマに認知症の男性と介護士の女性の交流を描き、第60回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた人間ドラマ。奈良県山間部のグループホームで暮らすしげきは、33年前に亡くなった妻の思い出と共に穏やかな毎日を過ごしていた。そこに介護福祉士としてやって来た真千子もまた、事故で我が子を失い大きな喪失感を抱えていた。ある日2人は、しげきの妻が眠る森を訪れるが……。
  • 監督・脚本:
    河瀬直美
    製作:
    エンガメー・パナヒ
    撮影:
    中野英世
    音楽:
    茂野雅道
    出演:
    うだしげき、尾野真千子、渡辺真起子、ますだかなこ
    2007年日本映画/1時間37分
    配給:
    組画
  • 2007年6月23日より、渋谷シネマ・アンジェリカ、千葉劇場にてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C) KUMIE / Celluloid Dreams Productions/ Visual Arts College Osaka

殯の森

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