インランド・エンパイア : 新作映画評論

掲載作品数22699

映画のことなら eiga.com エイガ・ドット・コム

新作映画評論

インランド・エンパイア インランド・エンパイア 7月21日より恵比寿ガーデンシネマにてロードショー

いつにも増して全体像は不明確・不定形

画像1

作品の意味やメッセージ、理に適ったモンタージュ……といった“映画らしさ”を求めてしまう観客の習性を嘲笑うかのように、本作はかろうじて1本の作品と称するに足るかたちをとりとめているに過ぎない。もちろんデビッド・リンチの映画だもの、何がなんだか判らないことは観る前から想像がつくが、意地が悪いことにストーリーらしきものや謎解きのヒントらしきものはけっこう周到に張り巡らせてある。だがそれは思わせぶりなだけで(というか、それこそがリンチを凡百の実験映画作家と区別してきたエンタテイナーぶりなのだが)、いつにも増して全体像は不明確・不定形。「ロスト・ハイウェイ」以来固執する多重人格テーマにしても、今回は多義的に増殖し変成し、映画の構造自体に及んで、単一の像を決して結ばない。

だがファンにとってはこれぞ至福。身体の芯にまで響く重量級ノイズ、演技抛棄状態で唇をひん曲げ続けるローラ・ダーン、一瞬しか映らないこともある豪華キャスト、あまりにもリンチ的なウサギ人間、それ以上にリンチっぽい裕木奈江(!)……とひたすら続く3時間の悦楽に浸っていればいいのだから。

ちなみに本作はあまり高精度じゃないDVカムで全篇撮られている。いつもの蠱惑的な暗闇を期待すると最初は幻滅するが(何しろアップはほぼピントが背景に合っている!)これもまたリンチ流の原点回帰と思えば美しい。

ミルクマン斉藤

ブックマーク: この記事をYahoo!ブックマークに登録する この記事をはてなブックマークに追加する この記事をlivedoorクリップに登録する この記事をBuzzurlにブックマークする この記事をnewsingにピックアップする

ABOUT THE MOVIE

  • インランド・エンパイア 画像2
  • インランド・エンパイア
  • 鬼才デビッド・リンチが「マルホランド・ドライブ」以来5年ぶりに放つ長編映画。ポーランド映画「47」のリメイク「暗い明日の空の上で」に出演することになった女優のニッキー。相手役の男優と私生活でも関係を持つようになった彼女は、次第に現実と映画の区別がつかなくなり……。ニッキーの私生活と劇中映画、ロスト・ガールや謎のウサギ人間など、いくつもの世界が複雑に絡み合い、前作にもまして不条理なリンチ・ワールドが展開していく。
  • 原題:
    Inland Empire
    監督・脚本:
    デビッド・リンチ
    製作総指揮:
    メアリー・スウィーニー、デビッド・リンチ
    出演:
    ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、ジャスティン・セロー、ハリー・ディーン・スタントン、ウィリアム・H・メイシー、ジュリア・オーモンド、ローラ・ハリング、ナスターシャ・キンスキー、裕木奈江
    製作国:
    2006年アメリカ映画
    上映時間:
    3時間
    配給:
    角川映画
  • 7月21日より恵比寿ガーデンシネマにてロードショー
  • オフィシャルサイト

インランド・エンパイア

  1. 作品ページ
  2. 映画レビュー
  3. 注目特集
  4. 映画評論
  5. 動画・予告編
  6. フォトギャラリー
  7. 価格.comで探す
  8. けいじばん
  9. 映画館検索

- PR -

ガイド

新作映画評 人気映画評論家による最新作批評のコーナー。近日公開または公開中の最新作の中から編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介。更新は、毎週火曜日。

読み込み中...
© eiga.com inc. All rights reserved.