善き人のためのソナタ : 新作映画評論

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映画

善き人のためのソナタ

劇場公開日 2007年2月10日
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善き人のためのソナタ 2月10日よりシネマライズほかにてロードショー

正義ではなく羨望こそが人を動かす。しかしそこからでも善は生まれうる

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盗聴と密告によって体制を維持し続けた監視国家、旧・東ドイツ。その忌まわしい実像は万人が知っていたはずだが、ベルリンの壁崩壊後17年経ってようやく本作のような映画が生まれたことに、ドイツ国民の傷の深さを感じずにはいられない。

しかも主人公は監視体制の総本山ともいうべきシュタージ(国家保安省)の敏腕局員。感情を押し殺してきた(というかすでに失っているように見える)彼だが、著名劇作家と女優のカップルを日夜盗聴するうち、自分でも意外な方向へと情動が動いていく。

沈欝なムードと色調の中、劇作家たちの生活をじわじわ侵食する悪意はまさに恐怖。その悪意のひとつの源でありながら(結果的に)人間性に目覚めてしまう主人公、その覚醒の理由をきれいごとにはしないところに誠実さを感じる。自由と愛と芸術を希求し苦悩に生きるカップルに惹かれた……というよりはむしろ、アパートの住民には陰口叩かれ、愛は手近の娼婦と惨めなセックス、組織の中では醜い政争の駒にしかすぎない自分の生活との落差に気づいてしまったからなのだ。

正義ではなく羨望こそが人を動かす。しかしそこからだって善は生まれうる。なんと正しい人間観察であることか。

ミルクマン斉藤

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ABOUT THE MOVIE

  • 善き人のためのソナタ 画像1
  • 善き人のためのソナタ
  • 秘密警察による反体制派への監視が行われていた冷戦時代の旧・東ドイツ。秘密警察局員のビースラーは、ある日“反体制派”と目される劇作家ドライマンを監視するように命じられる。ドライマンの家に盗聴器を仕掛けたビースラーだったが、彼の部屋から聞こえてきたピアノ曲“善き人のためのソナタ”に心を奪われてしまう……。監督は、本作でデビューを飾った33歳のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。第79回アカデミー賞では外国語映画賞にノミネート。
  • 原題:
    Das Leben Der Anderen
    監督・脚本:
    フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
    製作:
    クイリン・ベルク、マックス・ビーデマン
    撮影:
    ハーゲン・ボグダンスキー
    音楽:
    ガブリエル・ヤレド、ステファン・ムーシャ
    出演:
    ウルリッヒ・ミューエ、マルティナ・ゲデック、セバスチャン・コッホ、ウルリッヒ・トゥクール、トマス・ティーマ
    2006年ドイツ映画/2時間18分
    配給:
    アルバトロス・フィルム
  • 2月10日よりシネマライズほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

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