劇場公開日 2006年7月8日

ローズ・イン・タイドランド : 映画評論・批評

2006年7月11日更新

2006年7月8日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー

テリー・ギリアム流「不思議の国のアリス」

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10歳の少女ジェライザ=ローズの目に世界はどのように映っているのか。テリー・ギリアム監督はそれを描き出す。空の異常な青さも草原の黄金色も現実ではなく、彼女の目に映る色。学校にも行ったことがないこの少女の世界は、老いたロック・ミュージシャンの父がヘロインを打っては語る、夢と希望の残骸が堆積する干潟=タイドランドと、父に読んで聞かせる「不思議の国のアリス」から成る。外部の脅威に直面する際には、人形の頭部に人格を分裂させて託して、自分を守る。彼女が出会うのも、特殊な歪みを持つ人々ばかりだ。だが、直線の背骨を持つ人間がいるだろうか。人間はみな、生き延びるために背骨を歪め、その背骨で生きていくために、世界を変形しないではいられない。夢見る力とは実はそのようなものでもあることを、テリー・ギリアム監督は知っている。

ところで、この少女役のジョデル・フェルランド、どこかで見たと思ったら「スティーブン・キングのキングダム・ホスピタル」の幽霊で、「サイレントヒル」の悪霊。2歳から俳優業をするこの美少女の目に映る世界は、果たしてどんな形をしているのかーーと、そんな妄想のオマケも付いている。

平沢薫

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