劇場公開日 2006年9月9日

「父の娘に対する欲望の全てを描く」弓 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

1.0父の娘に対する欲望の全てを描く

2015年1月15日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

 「サマリア」に出ていた少女が主人公。そして、「うつせみ」にも増してセリフの少ない作品。

 6歳の少女を拾い船の上で育てる老人が、その少女が17歳になったら結婚をするという。この作品も寓話としてとらえなければ、少女を監禁して成長を待ってから自分の性行為の相手にするという、ただの変態じじいの犯罪を描いたものになってしまう。
 幼いころから自分の手の中で育った少女をいつまでも手元に置いておきたい。自分とその少女との一対の関係の中には、なんびとたりとも介入させたくはない。そのような、ときに近親姦的なものも含めて、父親が娘に対して抱く欲望を映画は描いているのではなかろうか。
 生殺与奪の権を握っていながら、その愛情ゆえに最後には自らが身を引いて、娘を外の世界へ送り出してやらねばならない。最期はそのような父親の悲哀を描いているように思えてならない。

佐分 利信