劇場公開日 1959年

「密室劇の原点にして傑作」十二人の怒れる男 オレさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0密室劇の原点にして傑作

2017年1月31日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

知的

父親を殺害した容疑で裁判にかけられた少年を巡り、12人の陪審員が有罪か無罪かを議論する様子を描いた密室劇の原点にして傑作と名高い作品。

基本密室劇と聞けばだいたい観たくなる笑。
しかしこの作品は今まで見たことなかった。
密室劇と聞くと三谷幸喜作品しか出てこない見聞を広げるために鑑賞。

登場人物は犯人の少年を裁く権限を持った12人の陪審員。少年が犯人だと裏付ける証人や物証があり皆有罪を確信するし早々に解散したがる中、少年に無罪の可能性があると主張する唯一の人間が現れたことから始まる。

全編通してほぼ会話のみ。
各陪審員には名前もなければ犯人の少年は冒頭の裁判で顔が映るくらいでセリフすらなく、人物像がまったくわからない。
しかしとてもハマる。
証人たちの証言や当時の現場の状況、実際に犯行を行なったとしてそれぞれの行動にかかる時間やその目的に関して検討を重ねることで積み重なって行く違和感。
1つ1つと疑問が増えて行くたびに浮かび上がる本当に少年は犯人なんだろうか?という大きな疑問。
少年が犯人ではない可能性を少しずつ高くしていく緻密で丁寧な検討に思わず鳥肌が立つ。

会話の内容がほぼ事件に関してのことだけなのにそれぞれの陪審員たちの人間性が徐々に明確になっていく点も面白い。
実の息子との確執により今回の事件に強い執着を持つ者、貧困層への露骨な嫌悪感と偏見でもって人を裁こうとする者、適当に切り上げて早く帰りたがる者など十人十色な12人が扇風機が動かない暑くむさ苦しい部屋にて汗だくになりながら討論する様はまさに12人の怒れる男笑。
動きがなく静かに見える作品だが、画面から伝わる彼らの熱量とピリピリした雰囲気に思わず映像にかじりついてしまう。

8番「人を脅す時に殺すと発言したとしても本気で殺すつもりはないだろう」
と3番を説得したのち、中盤で取っ組み合いのケンカになりかけた瞬間3番が発したぶっ殺すという発言に対して
8番「本気で殺すつもりはないだろう?」
とたしなめたあの瞬間、映画史上最も説得力のあるセリフとシチュエーションだったと感じたのは自分だけではないはず笑。
あのセリフには痺れた。。

正直無罪の可能性がある根拠として犯行に使われた凶器と同じものが売っていたからとか弁護士が無能だったかもしれないとかだいぶ無理矢理な仮説を立て過ぎな感じがしたのと最後まで有罪を主張する10番や3番を数で押し黙らせたような感じがするがそれを込みにしてもかなりの完成度の高さ。
今ではどの映画やドラマでもやりがちな当時の状況を説明しながらの事件の再現といったことを一切せずに、視聴者の頭の中で事件の経緯を想像させる作品として史上最高傑作といっていいと思う。

オレ