ノー・マンズ・ランド shawさんの映画レビュー(感想)

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ノー・マンズ・ランド

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戦争映画を見て、戦争の理不尽さを感じることは簡単だけど…。
投稿日:2009年5月24日
shawさんのレビュー

この作品が日本で公開された当時、『ブラックホーク・ダウン』や『鬼が来た』といった戦争や民族紛争に対する問題作も公開されており、私はこれらの作品を立て続けに鑑賞した。

『ブラックホーク・ダウン』では、映像のリアルさのなかに、ソマリア民兵を撃ちまくる米国兵と、撃たれながらもひたすら米国兵に群がってくるソマリア民兵を延々と描き、「民族紛争」と「軍事介入」の「理不尽さ」を考えさせられた。

『鬼が来た』では、微妙なバランスの中で日本軍兵と中国人村民の交流を描きながらも、とあるきっかけから「戦争の狂気(の一言では言い切れないが)」が発動し、それまでに育まれてきた交流がいっさい破壊されてしまうという「理不尽さ」を感じさせられた。

そして、この作品はというと、『ブラックホーク・ダウン』のように凄惨ではないし、『鬼が来た』のように当事国として意識する事が薄かったこともあり、なにより全編にわたって滑稽さを演出していた事もあって、大いに「楽しんで」観させてもらった。しかしながら、作品の核心である「戦争の理不尽さ」を、私は上記2作品以上に感じたように思う。それはなぜか。

例えば、ボスニア兵とセルビア兵との間で、どっちが戦争を仕掛けたかを言い争うシーンがある。銃を手にしているほうが、相手に「俺たちが戦争をはじめた」と言わせるのだが、最後はそのやりとりをみていた動けない男が「泥沼だ」とつぶやくように言う。この3人の間で繰り広げられるやりとり、世界で起きている紛争の縮図という構図はわかりやすいのに、その解決策は全然見えてこないというもどかしさ。

また、ストーリー中盤以降に登場する国連防護軍。これにより、物語は一気に収束されるのかというと、もちろんそう一筋縄にはいかない。軍上層部のてきとうな指示のせいで、現場(ノー・マンズ・ランドの塹壕内)では一触即発の状態にまで至ってしまう。この辺りのくだりも、笑い話で済ませられない妙なリアル感があって恐ろしい。軍隊の縦割り構造と、多国籍という横割り構造が交錯して、ちょっとしたことでも組織内がうまく機能しなくなるという問題は、実際に起こっていたらしい。

劇中、所々に笑いを誘うシーンがあって、ついつい笑いながら鑑賞してしまうのに、その笑いが収まった後、常に「この作品を観ていて笑っていていいのか?」というジレンマに陥ってしまう。そして、ラストでカメラが塹壕から遠ざかっていく中で、もやもやとした理不尽さを感じつつ、ではどうするばいいのかという自問に何も答えを見出せない自分を発見する…。この、見終わったあとの虚しさは、いったいどうやったら解消できるのだろうか…などと、柄にもなく真剣に考えてしまうパワーが、この作品にはあると思う。

個人的に、映画は自分が楽しめることが最重要と思ってたりするけど、こういう考えさせられる作品をじっくりと堪能するのも映画の良さの一つだとも思う。

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