劇場公開日 2004年10月9日

モーターサイクル・ダイアリーズ : 映画評論・批評

2004年10月1日更新

2004年10月9日より恵比寿ガーデンシネマほかにてロードショー

カリスマ革命家ゲバラの「原点」を活写した大傑作!

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映画の魅惑がこれほど凝縮されたドラマもない。文明から遠く離れた原野を駆け抜け、南米縦断1万キロを走破する「冒険映画」であり、涙あり笑いありの 「ロードムービー」であり、生涯の友情を誓った旅の仲間による、底抜けに愉しい「バディムービー」だ!

おまけに主人公は、亡くなって37年も経つのに、いまだに世界中の若者から「反抗のヒーロー」として熱狂的に支持されるチェ・ゲバラ。「ゲバラ日記」などの著作から伝わる情熱的な思想や行動や、アルベルト・コルダ(「ゲリラ・ヒーロー」が有名!)やルネ・ブリ(写真家集団マグナム)のポートレイト写真から伝わる独特のダンディズムといった、カリスマ革命家の姿はここにはなく、その思想や行動の「原点」が記録されるのみだ。

アメリカなどの帝国主義により分断された南米諸国の国境を越えながら、青年が見て聞いて触れた真実の姿は、やがて彼の心のなかに何かを宿す。そう、これは青年の成長の軌跡をつづる「ビルドゥングスロマン(教養小説)」、青春映画でもある。ウォルター・サレス監督は、ゲバラの「転回点」となった南米旅行を誇張もせずに描き、恋もすればダンスも踊るチャーミングな青年に活写して、カリスマ革命家を見事に脱神話化させている。

こりゃ、大傑作だ!! ガエル・ガルシア・ベルナルの美しい瞳が深い余韻を残す。後半になるにつれて、チェ独特の情熱的身ぶりをおびるあたり、彼の名演にホレボレする。

サトウムツオ

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