劇場公開日 2004年2月28日

「素晴らしいリアリティ」マスター・アンド・コマンダー こうめいさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0素晴らしいリアリティ

2014年11月20日
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興奮

知的

まず、この映画は、パトリック・オブライアンによる原作小説ファンのために作られたものです。そう言い切っても良いでしょう。
帆走軍艦の時代を舞台にした小説は、欧米では一ジャンルを形成しており、日本で言えば時代小説のようなものです。それなりにこの手の小説を読み、当時の英国海軍や帆船の知識があれば、楽しめる内容ではあると思いますが、原作の少しクセのある設定を知らないといろいろと不満を感じるであろう作品となっています。
帆走軍艦の時代小説は、日本でもホーンブロワーシリーズなどいくつも訳出されています。それらの作品を読んだ感想では、痛快時代劇といったものが多く、日本の時代小説の秀作のような深みはありません。
しかし、この パトリック・オブライアンによる原作シリーズは、当時の音楽、学術などの詳細な知識や、小説としての質の高さから欧米で絶大な人気を得ているものです。
その小説の世界を本物の帆走軍艦を用いて再現したところに、この映画の価値があるのであって、その他の観点からの評価は、はっきり言って意味がありません。
今見ることができない帆走軍艦のディテールや、聴くことのできない大砲の玉が飛び過ぎていく音など、小説を読み想像するしかなかったものを実感する。そのためにこの映画は作られたのです。
補足すると、本作品は、小説の設定や一部の筋を使用して、新しい結末を作っています。原作ファンにとっても満足のいくストーリーであると感じました。
さらに補足すると、原作のマチュリンは、トカゲをイメージする顔をした小男であり、ポール・ベタニーのような長身ハンサムではありません。しかし、不満を感じさせない出来です。
最後に、原作シリーズの1作目マスター・アンド・コマンダーを是非お読みください。(本作品の原作は10作目です。)ラッセル・クロウも本作品に出演するためにシリーズ全作を読んだそうですから遅くはありません。

こうめい